164-衆-外務委員会-4号 平成18年03月10日

○松原委員 そうした議論を踏まえた上で進めていきたいと思いますが、南京大虐殺というのが一つのイメージとして、特にアメリカの多くの知識人、場合によっては親日的な政治家まで、南京はひどかったねと、その事実を肯定した上で話をするというような、大変に先人に対して顔向けできない状況が私は続いているだろうというふうに思っております。
 この南京大虐殺を一つ事実あらしめた、その功績あるというか、その原因をつくった人物として、ティンパーリというマスコミ人がよく言われているわけでありますが、ティンパーリと中国国民党との関係について、ちょっとお伺いしたいと思います。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 ティンパーリ氏につきましては、日本軍の南京占領当時、これは一九三七年の十二月でございますが、中国に駐在していたマンチェスター・ガーディアン紙の特派員でありました。同時にということでございますが、中国側の資料によれば、同氏は中国国民党国際宣伝処顧問、同処在ロンドン事務所主任であったとされております。

○松原委員 極めて重要な指摘なんですよ。つまり、南京大虐殺を最初に報道した人間が、実は中国側の宣伝、まあ、言葉は悪いけれども、ナチス・ドイツにおいてゲッペルスがやっていたような、その宣伝担当の人間が、南京大虐殺という表現とこういったものを最初にアピールしたということですね。このことはきちっとやはり明記しておく必要があると思います。
 その次に、南京大虐殺を国際的に認めさせた「戦争とは何か」というティンパーリの書物がありますが、この書物に関して、これも非常に、こういった議論がありまして、ティンパーリは、単に顧問であったということではない、この本自体が国民党中央宣伝部が作成した対敵宣伝本二種類のうちの一つであることが東中野亜細亜大学教授によって明らかにされた。
 台北の国民党党史館に、極機密の判こが押された「中央宣伝部国際宣伝処工作概要―一九三八年から一九四一年四月」という文書が存在していて、このことが、つまり、南京大虐殺を世の中にアピールしたこの書物自体が、国民党中央宣伝部が作成した対敵宣伝本の一つであることが明記されているというふうに書いてありますが、このことについて御答弁いただきたい。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 今、先生から言及のありました日本の研究者の方がその論文の中におきまして、「戦争とは何か」という本が中国宣伝部国際宣伝処工作概要の中に宣伝書籍の一つであったというふうに記載されているのは承知しております。ただし、政府としましては、直接事実関係を確認しているわけではございません。

○松原委員 何か今、質疑時間を見たら、私、四十分のつもりが、持ち時間の中で三十分に減らされているので、急いでやらなきゃいけないので大変困っております。
 このティンパーリ氏が、同時にトランスパシフィック・ニュース・サービスの責任者であったか、これについてお伺いいたします。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 今先生が言われたとおり、ティンパーリ氏がトランスパシフィック・ニュース・サービスの責任者であったという論文が存在しております。

○松原委員 その存在している論文の説明に入ると思いますが、私もここにその邦訳を持っております。
 ザ・ローダウンという、一九三九年一月に出された、こういった雑誌があります。日本の研究家の茂木さんという方が、大変苦労してこれを入手して翻訳しておるわけでありますが、この中に、このティンパーリ氏が責任者をやっていた記事が載っておるところがあります。そのところを、時間がないので簡潔に、速く読んでいただけますか。よろしくお願いします。

○梅田政府参考人 読ませていただきます。
 ちょっと長くなりますが、日中戦争に関して、プロパガンダのニュースリリースにより残虐写真が新聞社にあふれ始めた。これらのほとんどは元上海の新聞人が経営するトランスパシフィック・ニュース・サービス社から出たものである。残虐写真のほとんどのものはまともな検証がされていない。また、大部分のものは二十年前に連合国によってつくられリリースされたベルギー残虐事件と同じような手法でつくられたものである。最も忌まわしいものとしては信頼の高いAPに流されたものである。それが印刷物に載るとだまされやすいアメリカ人はしかるべく反応した。写真は日本軍将校が十字架に縛りつけられた中国人捕虜を使って銃剣の練習をしているのを写したものである。もう一人の日本軍将校は大げさな笑い顔でこれを見ている。APは写真は本物であると言い張ったが、その後それを取り下げ、複写したものであることを告白せざるを得なかった。
 その一枚の写真の歴史は興味深いものである。というのはほとんどのその手の写真の歴史に光を当てることになるからである。最初、その写真は、一九一九年に上海で絵はがき用に売り出された。それは内陸地方で暴虐を働く軍閥の一人を非難するプロパガンダとして使われていた。その後、今度は北方の地域で中国の共産主義者の将校が中国人の捕虜を虐待している写真として使われた。その後、日本軍が満州へ進出すると、反日プロパガンダに使われた。満州の危機が収束しニュース価値がなくなると、今度は蒋介石が中国紅軍掃討作戦を行っているときに中国共産主義者によって行われた残虐行為を写したものとして再び登場した。
 最も最近に使われたものは、お決まりの目的である、アメリカ人の同情心をかき立て、反日感情をアメリカで高めるものであった。
 そういう記載がございます。

○松原委員 これは一九三九年に出されたものでありますが、ちょうど南京のことをティンパーリが、しかもこのティンパーリが責任者であるその雑誌において、それがここに出てくるトランスパシフィック・ニュース・サービスですよ。ティンパーリというのはどういうことをやってきたのか。それがどれほどでたらめなことをやっていたかというと、一九三九年のローダウンという書物の中に書いてある。
 この中には、それはヒトラー、ナチスのそれこそプロパガンダのやり方と書いてある。まさに、こういうふうなことをベースにして南京大虐殺の、最初にティンパーリが数字も言っているんですから、四万幾つという数字を、四万がだんだんふえて三十万になっちゃったんだけれども。
 つまり、その段階で、四万という数字は、その後、この間、私、外務委員会で質問したように、紅卍字会が日本の特務機関によって遺体処理をしたとき、せいぜい水増しして一万数千体ですよ。だから四万自体がもうあり得ない数字なんですが、ティンパーリというのはそういう人物である。そのティンパーリがこういったことを明らかにしていったんだということを我々はきちっと認識しなきゃいけない。
 それでは、こういったことに対して、これは茂木さんという方がかなり頑張ってやってきたんですが、こういう我々の先人のことをまさに汚名を着せる、マイナスのプロパガンダをする、こういう動きに対して、外務省のどこがこれは担当するんですか。これに対して、茂木さんが日本国の一人の国民としてやってきたようなこと、こうやって実証したわけだ、資料をとって、大変細かくやって。こういうのは外務省、やらないんですか、やるんですか。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 外務省でやるとしますと、アジア大洋州局ないしは広報文化交流部でございます。今までのところ、今先生が指摘されたような論文の検証については実施しておりません。
 以上でございます。

○松原委員 やはり我々は、日本という国は歴史があってやるわけですから、こういうティンパーリのような人間がつくり始めたことが、さらにそれが針小棒大になって今の南京大虐殺の実像をつくっている。
 東中野さんは、これに関して、例えばアイリス・チャンが使っている写真とか、ほとんどにせものというか、彼は全部にせものというふうに喝破しているわけですよ。私はやはり、そういうことにエネルギーをかけるというのは、国益を考えた上で重要だと思うんですよ。
 これはちょっと時間がないので、さらに先に進みます。
 これは産経新聞に書いてありますが、ALPHAという団体があるんですね。このALPHAという団体がハリウッドで、これは誤報だったんですが、イーストウッド監督で映画をつくるという話があった。これはそうじゃないということが産経新聞のワシントン支局長の古森さんの報告で明らかになったわけですが、このALPHAという団体がこれに絡んでいたんですが、このALPHAというのはどういう団体でしょうか。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 ALPHAは、アジアにおける第二次大戦の歴史を保存することを目的としまして二〇〇二年に結成された団体であり、写真展やシンポジウムの実施等の活動を行っているものと承知しております。
 なお、同団体のウエブサイトを見ますと、その活動趣旨としまして、日本によるアジア侵略の歴史的事実を保存することを記載しております。
 日本政府として、必ずしも同団体の活動の詳細を承知しているわけではございませんけれども、今申し上げたような趣旨の事実は承知しております。

○松原委員 このALPHAという団体は、在米中国人を主体とするALPHAという団体と産経に載っていますね。日本は侵略や虐殺に対して公式謝罪も賠償もしていない、その実行を求めるとしている、中国当局が関与する世界抗日戦争史実維護連合会の傘下にある、こういうふうに書いてあります。
 いわゆるこの母体となる連合会、これは中国国営の新華社通信につながるサイトを持ち、中国主要都市で当局の支援を得て集会など開いているというふうに産経新聞には書いてありますが、これは事実でしょうか。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 母体となる団体ということで、多分先生は抗日戦争史実維護会を念頭に置かれているのではないかと思いますけれども、中国政府とこの団体がどのような関係にあるかは必ずしも定かではございませんけれども、この団体は、日中戦争の苦痛に満ちた歴史の真実を保存することを目的としまして、一九九二年に設立されたと承知しております。

○松原委員 産経新聞には中国との関係を明記しているので、私はこういう団体を調査するというのは国益上極めて重要だと思うんですよ。さっき言ったティンパーリの問題もそうですが、こういう団体が何をしようとしているのか、日本に対して何をやろうとしているのか、何を仕掛けようとしているのか。
 例えば、ここに書いてありますが、このALPHAは、九〇年代後半、ALPHAというか連合会だと思いますが、アイリス・チャンの書いた「ザ・レイプ・オブ・南京」、ほとんどうそ八百が書かれている。写真も、東中野さんの検証によっても、全然違うところの写真を持ってきて、日本兵にこれから虐殺される中国人の婦女子の写真とか、うそ八百を書いている、この雑誌。正式なこの本質に関する抗議文は日本は出していないんですが、こういった「ザ・レイプ・オブ・南京」という、これによってアメリカの多くの人たちが、日本はナチスと同じようなホロコーストを南京でやったと勘違いしている。こういう雑誌の宣伝、販売にこういった連合会やALPHAが協力したという事実はあるんですか、どうですか。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 アイリス・チャン氏の「ザ・レイプ・オブ・南京」という書籍に関連しましては、当時、九八年の四月に斉藤駐米大使が、非常に不正確な記述や一方的な見解の多い本で、事実の誤認、恐らく曲解もあるんだということを記者会見で述べております。
 それから、今先生の御指摘のあった点でございますけれども、政府としましては、同団体がそのアイリス・チャン氏の書籍の宣伝、販売に協力した実績があるかについては確認はできておりません。

○松原委員 大事なことは情報を探るということでありまして、今情報戦の時代でありますから、ティンパーリの存在一つとってみても、これは、茂木さんという方が本当に一人で苦労して、アメリカから、こういう一九三九年の資料を取り寄せたりして証明しているわけですよ。
 こういうことを、別に民間の人もそれはやっていいわけですが、やはり国家として事実を明らかにするということはやる必要がある。
 ティンパーリがどういう人間だったか、そして、そのALPHAというのはどういう団体で、そこから、例えば、今回、イーストウッドさんが主演の映画はできないかもしれないけれども、南京についての別の映画はつくるでしょう。その映画は、まさにアイリス・チャンが書いたような時代背景を伴って生まれるのではないかと大変危惧しております。
 その映画が向こうでブレークすれば、ブレークすると同時に、日本人イコールナチズムと一緒という、最初、私が、李肇星さんがそういうことを言ったというのは一つの意図があるんじゃないかと言った。その意図がそこに、ALPHAとこの連合会、それからティンパーリから始まる、まさにプロパガンダですよ、こういう中で一つの渦にきっちり我々ははまっていく。しかも日本人はそのことに対して極楽トンボで何も知らない、何も反撃をしない。
 私は、これは外交上、根本的な、特に先人の名誉にかかわる問題であり、我々がプライドを持ってやっていけるかどうかの問題であり、さっき冒頭言ったように、アメリカの日本びいきの知識人ですら、日本というのはかつてナチスと同じようなことをやったんだね、ナチスについては我々は知っていたけれども、日本もやったというのはようやく最近わかったよと、こんなばかなことを言われるということがあっていいのかどうかという議論を私は申し上げたいわけなんですね。
 そこで、こういったものに対して、今、アメリカにいる外務省の人間が反論したと言いましたが、日本政府は、例えば新聞記事で反論するということはしているようでありますが、このことによって植えつけられたイメージをひっくり返すことができたというふうに御認識をお持ちでしょうか。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 その点につきましては非常に判断が難しいと思います。日本の言うことをきちっと理解した方もおられれば、そうでない方もおられるのは現実だと思います。

○松原委員 私は、これはほとんど認識されていないと思うんですよ。ほとんど認識されていない。
 問題は、やりましたよというアリバイ証明を我々は外務省に求めているんじゃないんですよ。アメリカの日本に対して間違ったメッセージを変えることをしなければ、これは引きずっていくんです、一回決まってしまえば。
 中国側と言っていいかどうかわからないけれども、意図的にそれをする情報部があって、ティンパーリ以来の歴史があって、そして南京大虐殺といえどもティンパーリがつくった一つの話の中の出来事であるし、それはいろいろなことはあったと思いますよ、戦争だから。しかし、ああいうジェノサイドをやったというインパクトをつける、ナチスと一緒だと。そして、そのためにALPHAという組織があって映画までつくる。すごいメディアミックスでアメリカで彼らは戦略を展開しているということを我々は認識するべきだと思うんですよ。
 私は、日本人に対するアメリカ人の誤った南京大虐殺等の意識調査というものをやるべきだと思うんです。そういうアメリカの知識人に対してのアンケート調査、もしくは一般国民に対するアンケート調査、こういうものもぜひやっていただきたいと思うんですが、大臣、御所見をお伺いしたいと思います。

○塩崎副大臣 先生の今一連の御意見については、傾聴に値することがたくさん入っていると思います。
 一方で、アメリカの一般人あるいは有識者の日本に対する見方ということに関しての意識調査を見てみますと、比較的よい結果が出ていて、日本を信頼できる国というふうに見ている一般の人は多いわけですね。
 ただし、今の南京の事件を初め個々の歴史の問題等についての調査をすべきかどうかということについては、我々としては余りこの意義を感じないというところでございまして、一般的には、当然、良好な対日関係、対日観を維持向上させることをやっていかなければいけないとは思っております。

○松原委員 日本に対していい国だという印象を持つのは、それは非常に当たり前で、大事なことだし、我々も貢献しているわけですよ。
 彼らが日本に対して好意的であっても、いや、かつてナチスみたいなことをやったんだねと思うことが問題で、その部分に対して、南京大虐殺三十万人あったみたいな話を、アンケートとかやったら、みんなあったと思ったら、これはアウトなんですよ。この部分に関して、私は、税金を使ってアンケート調査をするのは国益になりますよということを言っているんです。
 もう時間がないのでまとめて麻生大臣にお伺いしますのは、ぜひともそういうアンケートをやっていただきたいということと同時に、本来、外交というのはいろいろな分野があります。しかし、相手が、まさに情報操作によってと言っていいでしょう、情報操作によって日本をこうやって悪者にすることによるメリットがあるんですよ、あるから情報操作をしてきているんですよ。
 しかし、だからといって我々は悪者になる必要性はないのであって、これに関しては、金も使い、すべての我々の資源を使い、先人の名誉を守り、我々につながる後輩の誇りを保つために、アンケート調査をやって実態を調べることは必要ですが、知識人に対するアンケート調査とか、きちっと対応するべきだと思います。
 そのことをやはり外務省の大きな主題として、歴史認識をまさに中国が言うんだったら言い返してやりたい、我々は真実の歴史認識を新たに確立するんだ、本当のことを言え、こういう話をするべきだと思うんですが、含めて答弁をいただきたいと思います。

○麻生国務大臣 アンケート調査をするかどうかは別にして、少なくとも歴史認識の話等々は、今、アメリカも一緒にやろうという話になったりして、いろいろ、おかげさまで日韓は始まりました、日中の方はまだなかなか緒についていないところですが。
 今言われたように、ヒトラーのときのゲッペルス、いろいろありますけれども、その国のための宣伝相という者というのは、これは正直言って、松原先生、日本の場合は昔から下手ですな、それは率直にそう思いますよ。
 会社のPR含めて、ADとPRの、いわゆるアドバタイズメントとパブリックリレーションズの区別がついていないのが普通の人ですから、そういった意味では、日本の場合は、この種のPRは下手というまず大前提に立った上で、私どもとしてはPRというものを考えたときに、これは何も中国が中国人を使う、日本人は日本人を使う、アメリカ人はアメリカ人を使うというんじゃなくて、少なくとも日本という国のイメージを正しく持ってもらうためには、そういったメディア、PRというものにプロのなりわいとしてやっている人を雇うとか、いろいろな形のやり方は今後考えてしかるべき問題なんだと私自身は基本的にはそう思っております。

○原田委員長 申し合わせの時間が過ぎましたので、御協力をお願いします。

○松原委員 はい、終わりますけれども、こういったことに民間で汗を流している方々がおられるうちに、彼らも年をとっています、ぜひともそういった方と連携して、我々の誇りを高からしめるように、向こうの変なプロパガンダに、少なくともアメリカの世論が大事ですから、アメリカの世論がそのプロパガンダに巻き込まれないように最大の注意を外務省としては払っていただきたいと思います。
 以上で終わります。
    
164-衆-外務委員会-5号 平成18年03月15日
164-衆-外務委員会-5号 平成18年03月15日

○松原委員 きょうは、外務委員会の一般質疑ということで、広範にわたってお伺いしたいと思います。
 島根県が竹島の日を昨年制定したわけであります。二月二十二日でありましたが、本年二月二十二日に、島根県において竹島の日の啓発行事が、竹島は日本固有の領土である、これはずっと今まで係争してきているわけでありますが、我々の立場は日本固有の領土であると。
 外務大臣は、この啓発行事に招待されていたけれども欠席をしたというふうなことであります。また、代理出席等の対応もなかったというふうに聞いておりますが、なぜ欠席をなさったのか、また、なぜ代理出席等の対応も考えなかったのか、お伺いをいたしたいと思います。

○麻生国務大臣 二月の二十二日に行われたんだと記憶しますけれども、島根県竹島の日が地方自治体の権限において条例で定められてあるということは確かだと思います。国会会期中でもありましたので、私どもとしては、検討した結果、欠席をさせていただくということになったと記憶します。
 竹島の領有権につきましては我が国の立場は一貫しておりますので、改めて松原議員に申し上げるまでもなく、これは日韓双方、李承晩ラインにさかのぼる話なんだと記憶をしますけれども、いずれにいたしましても、大局的見地から国民感情を双方であおらないようにということで、問題解決を図るべく、これは引き続き粘り強く努力をしていかないかぬということなんだという以外にないと思います。

○松原委員 国会会期中であったということでありますが、このときに外務委員会が行われていたかどうか確認はしておりませんが、私は、この竹島の日というのは、日本の国内における思い、日本の固有の領土であるというこの思いと、やはり我々の決然たる意思を、それは韓国だけではなくて世界に知らしめるためには、呼ばれていなければいいんですよ、呼ばれて行かなかったということは、私は極めて残念であるというふうに申し上げたいわけであります。
 来年以降、呼ばれたらぜひ行っていただきたいと思いますが、代理出席も一切なかった。こういう場合、代理出席というのがどういう形であるかというのはわかりませんが、全くもってそういったことも検討する余地はなかったのか、お伺いいたします。

○麻生国務大臣 正確な記憶じゃありませんけれども、二月の二十二日はたしか予算委員会の最中だったと記憶しますので、代理出席を含めて、ほかの議員もとられておったんだと記憶しますけれども、検討させていただいた記憶があります。私どもとしては、それはしようがないねという話をした記憶がありますので、呼ばれたから何となく避けたとかいうような話になりますけれども、竹島という領土に関しましては、従来、一貫して主張し続けてきておるというところに関しましては、全く変更があるわけではございません。

○松原委員 そういたしますと、これは予算委員会がこのときあったということでありますが、こういった明らかに国会の公務で出席できないという条件が二月二十二日にあったから今回出なかったけれども、そうでなければ、これは出席をする意思はあった、こういう認識でよろしいですね。

○麻生国務大臣 この種の話は、最初に申し上げましたように、双方で、双方でというのは韓国と日本との間で、妙に話が感情的にならないように努めるというのはすごく大事なところなんだと思っております。
 基本的に、私どもとしては、ここはいわゆる諸般の事情を考えてというのが一番正しいんだと思いますけれども、少なくとも、地方自治体でおやりになる事業でもありますが、私どもとしては、こういうような形で、例えば拉致の話にしても、いや、あれは新潟県だけの話じゃないんですよ、みんな日本じゅうでこういう関心を持つべきなんですよということで、こういったものを風化させないようにきちんとした配慮をしておく。
 そういった意味で、竹島の日等々いろいろ含めて、何も領土の問題はこれに限らないんですけれども、北方領土を含めていろいろありますけれども、そういったものに関しましても、私どもは、こういった形での運動がなされるというのはきちんとされるべきものだと思っております。

○松原委員 時間の都合があって次に移りますが、大臣の御答弁をいただいた限りにおいては、このとき公務があったから行けなかった、そういった公務がなければ出席をした、こういう認識であるというふうに私はとらえさせていただきました。
 次の質問に参りたいと思います。
 先ほど水野賢一議員から、中国のマスコミ統制の話がるるありました。私は、このことについてさらに議論をしていきたいと思うわけであります。
 先般、李肇星外交部長、李肇星さんが発言した内容について、日本側が中国駐日大使を呼び出したときに、その呼び出しに対して拒否をしたという報道が一部報道機関によってなされたわけであります。それに対して、「中国大使館スポークスマンのコメント」として、「一、三月八日午後、外務省から中日関係について大使と意見交換したいとの連絡があった。正式の申し入れとの明示はなく、具体的なテーマの提示もなかった。 二、たまたま当日大使主催の重要な行事などを予定していたため、双方が相談した結果、翌日に会うことにした。」こう書いてありますが、その後に、「各報道機関には、今後中国大使館に関する記事を発表する際に、事実関係を当大使館と事前に確認するよう要望する。」こういうふうなコメントがなされているわけでありますが、こういったコメントに関してどのように感ずるのか、これをお伺いいたします。

○金田副大臣 委員御指摘のただいまの点につきましては、在京中国大使館が御指摘のコメントを発表したということは承知をいたしております。
 いずれにしましても、報道の自由は我が国における基本的な権利であります。各報道機関もこれに基づいて客観的な報道に努めているものと承知をしております。

○松原委員 私は、こういったコメントを大使館が発表するというのはかなり異例ではないかと思うわけでありますが、仮に、日本の大使館がこうしたコメントをどこかの国のマスコミに対して要望したということは過去あったのかどうか、わかる範囲で教えていただきたい。

○鹿取政府参考人 今の先生御指摘の「中国大使館スポークスマンのコメント」、最後の二行のことをおっしゃっているんだと思いますけれども、こういうコメントを我が方大使館が在外で行ったということは承知しておりません。

○松原委員 私は、このコメントというのは先ほどの水野議員の質問ともラップしているように思うわけであります。つまり、日本の報道機関に対して、日本の政府は日中の関係を良好にするように指導してほしいという話がさっきあった。彼らの認識はかなり違うわけでありますが、その認識を日本に持ってきて、今後中国大使館に関する記事を発表する際、事実関係を当大使館と事前に確認するように、何か戦前の事前検閲制ではありませんけれども、どうも彼らの意識はそういうものがあるんじゃないかと私は思うわけであります。
 しかも、こういったことに関して、私は先回の外務委員会での質問でも、中国側のプロパガンダ、反日のプロパガンダというのは、かなりこれはアメリカ国内においても徹底して行われているということを論証していったわけでありますが、日本国内においても、こういったコメントを出して、マスメディアに対してのあめとむちというんですか、こういったコメントを出すことによって、仮に、事前に接触してくるマスメディアがあれば、ちょっともしかしたらあめを出すかもしれない、逆らうところがあれば、何かむちが出せるかどうかそれはわかりませんが、そういう彼らの報道に対する姿勢というのはここにもあらわれていると思うので、私はこの委員会を通して申し上げたいのは、こういうふうな中国大使館のスポークスマンのコメントというのは極めて批判されるべきものだというふうに思っております。
 これに関して、今雑誌のウイルというものが随分出ておりますが、そのウイルの中で掲載されていて、事の真偽は明らかになっておりませんが、「対日政治工作」という文章がつくられた。これがウイルの中で掲載されているんですよ、雑誌で。一昨年あたり創刊された雑誌なんですが。
 その中でいろいろなおもしろい記事があって、これ自体の信憑性というのは議論が必要ですけれども、その三ページ目に書いてあるのは、「今日では、新聞、雑誌を含めいわゆる「マスコミ」は、世論造成の不可欠の道具にすぎない。マスコミを支配する集団の意思が世論を作り上げる」「偉大なる毛主席は「およそ政権を転覆しようとするものは、必ずまず世論を作り上げ、まずイデオロギー面の活動を行う」」というふうなことを書いてあって、世論操作が必要だ、これは最近といってもちょっと前でありますが、中国の対日工作の書物である。
 ただ、真偽のほどはわからないです。ウイルという雑誌に取り上げられているわけでありますが、「雑誌、特に週刊誌については、過去の工作は極めて不十分であったことを反省し、十分な人員、経費を投入して掌握下に置かねばならない。接触対象の選定は「十人の記者よりは、一人の編集責任者を獲得せよ」」こういう話になっているわけであります。
 私は、先ほどの水野議員の議論も今の中国大使館の議論も、一連の完全に日本悪者説を定着させるための戦略が、この工作の真偽というのはありますけれども、そういったものがあるのではないかというふうに思っているわけであります。
 そうした中で、昨今非常に中国国内でおもしろい現象が起こっておりまして、「氷点」という雑誌のことが議論をされているわけであります。その氷点という雑誌の前に、マスコミに対する圧力としてもう一点、「大紀元」という報道があるわけであります。
 大紀元という雑誌がある。その大紀元大阪事務所というものが、今月の三月十日午後五時から十一日の深夜にかけて、日本大紀元時報社大阪発行事務所に何者かが侵入した、こういったことが書かれているわけであります。
 この大紀元というのは、例えば中国において既に八百万人以上の共産党員が脱党したとか、そういうかなりえぐい話を載っけているわけです。真相というのはなかなか確認のしようがありませんが、例えば鳥インフルエンザで多くの死者が既に発生しているとか、かなりそういった意味では際物的かもしれないけれども、それが事実かもしれない、そういった内容をずっと報道しているグループであります。
 その大紀元という雑誌社というか時報社の中に泥棒が入った、こういったことでありますが、この経緯についてお伺いいたします。

○縄田政府参考人 お尋ねの事件につきましては、これは被害者の方でみずから公表されておられることでございますので、若干お答え申し上げたいと思いますけれども、御指摘のとおり、本件は、本年の三月十日から三月十一日にかけまして、大阪市内の被害者方においてパソコン等が窃取されたという被害届を大阪府警の方で受理をいたしておりまして、現在捜査中であるというふうに報告を受けております。
 詳細につきましては、捜査中の事案でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。

○松原委員 この大紀元というところの情報を持っているパソコン三台が盗まれた、金品の被害はなかった、こういうふうに書かれているわけであります。
 かつて、この大紀元は、日本で創刊し始めた五年前の三月十四日にも、そういった意味で、資料を物色している男、ファイルを保存していた引き出しが破壊されたということも報告をされているわけであります。
 この大紀元の関係者によると、最近、最近というのは今この段階で、世界各地の大紀元支社が盗難や襲撃、破壊工作等の被害を受けているというふうに書いてあるわけでありまして、このことについて関係者は、この事件は中共が関与している可能性がある、こう言っているわけであります。しかし、これも真実はわからないわけでありますが。
 こういったことを含め、情報に関して中国が、これがどうかということではなくて、全般に、極めてプロパガンダという点においてさまざまな工作をしている。これはどこでもやっていることであります。やっていない国は日本だけかもしれないと思うぐらいであります。
 そういう状況にあるということをまず認識した上で、その中国で、「氷点週刊」という雑誌が、先般、中国において一時停刊処分になった。なぜ氷点週刊が停刊になったか、その理由について、知っている限りで教えていただきたい。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 氷点週刊でございますが、一月の十一日付の版で、「現代化と歴史教科書」と題する中国の歴史教科書を批判する論文を掲載いたしました。それがゆえに一月二十五日付をもって停刊処分となり、さらに李さんという同紙の編集長が更迭されたものと承知しております。
 その後、氷点週刊は、三月一日、停刊の原因となりました論文を批判する論文を掲載し、復刊したというふうに承知しております。

○松原委員 その批判された論文の中身に関して、どういう中身だったか教えていただければと思います。

○梅田政府参考人 少し長くなるかもしれませんが、できるだけ簡潔に述べます。
 論文は、中国の歴史教科書の問題点を次のとおり指摘ということで、例えば、中国の歴史教科書については、義和団事件の記述に見られるように、多くの誤った記述があります。中国の近代史観にも、自己の近代史に対する深い反省が足りないといったような問題があります。歴史教科書の編さんに見られる共通点は、現有の中華文化が最高のものであり、外来文化の邪悪さにより現有文化が純血を侵食され、政権あるいは暴徒の専制的な暴力を用いて思想文化分野の邪悪を排除するものである。いずれにしろ、今こそ我々がみずからの歴史教科書を正視するものではないではないかといった論旨でございます。

○松原委員 つまり、一九〇〇年に起こった義和団事変において、児童五十三人を含む二百三十一人の西洋人が虐殺された史実を、この中国の中学、高校の歴史教科書がほとんど記述されていない、これは歴史に忠実ではないという自己批判したものである、こういう内容なんであります。そのことを載っけたことによって「氷点」は停刊処分に追い込まれ、その記事を自己批判して三月一日に再刊された、こういうことであります。
 このことについて麻生外務大臣がどうお考えか。既に麻生外務大臣はウォールストリート・ジャーナルの中で、もはや中国が完全に民主化の国家へ変容するか否かではなく、どの程度の速度でそうなるかということを述べていて、中国のこの民主化の中で、こういう言論の自由というものも踏まえたお話だったと思うわけでありますが、この週刊氷点のこういった事柄について、この辺の経緯についてどのような認識を持っているか、お伺いいたします。

○麻生国務大臣 これは私の主観ですから、あらかじめお断りしておきますけれども、主観として申し上げさせていただければ、やはりインターネット、携帯電話、モバイルホン、そういったようなものというのは、基本的には情報統制をするのに最も扱いにくいツールとして、道具として、三億四千万台、今中国に携帯だけで普及しておるという現実からいきますと、今言われたような紙の文化という「氷点」初めそういったものを統制しても、現実問題としては情報はすさまじく速く流れるという現代の情報機器の進歩についての基本的理解が余り足りていないかなと。日本の方もかなりおくれた政治家もいっぱいいますけれども、そこらのところの情報機器の操作が全然わかっていない人というのは、正直、この話を聞いて一番最初に、ああ、とてもそんなものやってもというのが正直なところです。
 二つ目は、やはりこういった道具が出てくるということは、とりもなおさず、少なくとも日本初め報道の自由が保障されている国においては、ちゃんとどうとかしろとか、こうとかしろとかいったって、それはなかなかどうともならぬということは、これは日本に限らず、いわゆる民主主義国家の中において報道の自由というものはいろいろな形で自由にされるという大前提がありますので、そこらのところは、中国が今後さらに経済的に発展していく段階において、この情報というものはすごく今までと違ったものだ、こういうものだという理解がないとなかなか難しいなというのが正直な実感で、今言われれば、その二つが一番、私、今伺ったんですけれども、今伺った範囲ではそのような感じが率直な実感です。

○松原委員 そういうわけで、中国側が、情報統制というのはなかなかできない。実際、そうはいいながら、一つの威嚇も含めてさまざまなことが行われている可能性があるわけですが、むしろ、前回の外務委員会の質問で言ったように、情報統制ではなくてデマを流すという、このことの効果の方が、逆に言えば、今大臣がおっしゃったような情報化社会では、デマの内容を精査することなくデマがデマを呼びということは、これは、流言飛語が飛び交うというのは、情報時代の一番際立った内容だと思うんですね。
 そこで私はお伺いしたいわけでありますが、日中戦争でかつて中国人は一千万人死んだと言い、そして二千百万と言い、最近は江沢民さんが三千五百万という数字まで挙げた。この三千五百万という数字までどんどんと数がふえている日中戦争における中国人の犠牲者の数について、これは外務省としてどう認識しているか、お伺いしたい。

○梅田政府参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、中国政府は、抗日戦争期間中の中国の軍と民の死傷者は三千五百万人余りであるとしております。この数字につきましては、昨年九月三日の日の胡錦濤国家主席の演説でも指摘されています。それから、先ほど先生からお話のありましたように、一九九五年以前は中国政府は二千百万人という数字を述べております。
 いずれにしましても、この日中戦争の死傷者の数につきましては、専門家の間でも一致した認識が得られないものと承知しております。それからまた、中国側もこれらの数字の根拠につきましてきちっとした説明をしたことはないというふうに承知しております。

○松原委員 日本側はなぜ反論しないのかの理由を簡潔に教えてください。

○梅田政府参考人 中国側に対しましては、さまざまな機会に、この数字の根拠は何であるのかというようなことも照会しておりますし、それから、根拠のない数字は使わないようにということも申していることもございます。

○松原委員 問題は、今、日本側がその認定、数字的なそういったものは見方によって違うわけですね。しばしば集会でも、主催者側発表が例えば二千人でも警察発表が五百人とか、こういうのはよくあるわけであります。
 ところが、それは実際の実数というのはなかなかわからない。しかし、中国側は三千五百万と。最初二千百万と言っていたのが三千五百万、その前はもっと少なかった。どんどん数を上げていって、三千五百万人、三千五百万人、こういう数字の刷り込みを今やっている。これはある種のプロパガンダだと思うんですよ。
 国家がプロパガンダをやることは、上品な国家とは私は必ずしも思えないわけでありますけれども、中国政府が国家を挙げてこうした数字を誇張して全世界に発散をしている。そのことによって、情報化社会でその根拠は何かということよりもその数字がおもしろおかしくどんどん伝わるということは、大変に危惧するべきことだと思うんです。
 こういうふうに中国側が数字を三千五百万にしても、例えば南京だって、実態とかけ離れた話をし、そして実態とかけ離れた数字を挙げて、何十万人も残虐に殺された、それはあたかもナチスのホロコーストのようであった、こういうふうなプロパガンダを中国がどんどんしていって、日本はまじめですから、それは日本としてはもっと数が少ないということを証明して、反論するわけではなくて、それは根拠はどうですかということを聞く程度であるならば、私は、世界のいろいろな世論とかそういったものはどんどんと中国側のデマゴーグ、中国側のプロパガンダに引きずられていってしまうと思うんです。そのことによって我々は大変な国益を損なうと思うんですが、麻生大臣、いかがお考えでしょうか。

○麻生国務大臣 基本的には、歴史的な事実についてはいろいろな意見がある。南京虐殺三十万とか、やれ、死んだ現場をあなた見たことが何人ぐらいありますかと言うと、二人ですとか一人ですと。どうして三十万と言うんですかと言うと、答えがなかった。これはいろいろ記録がいっぱい残っています。写真も、これは関東大震災の写真であって歴史的事実とは違っているじゃないか。これは全部、検証されたものは幾つもあります。松原先生も御存じのように、そういったものがあることは事実なんであって、そういった意味では、専門家と言われる方、専門家と称される方、もしくは専門家と思っておられる方の認識は、これは必ずしも一致していないというのは事実だと思っております。
 ただ、私ども、今おっしゃられたように、外国の政治家とか知識層とか言われる世論に影響を与える方々の間で、ある程度バランスのとれた対日認識というようなものをつくっていくという努力は大変大事なところだと思っております。そういった意味では、プロパガンダというか広報というかPRというか、いわゆるADとは違ってPRの方が非常に重要なものなんだ、私どももそう思っております。ただ、そこらのところが、国的に挙げてやっているかというと、これは余り日本人のうまいところじゃありませんから、やるならちょっと全然別の方法を考えないかぬのかなと思っているのも正直なところです。
 ただ、これは、この間BBCというところがやった、BBCによる世界の世論調査という数字が出ましたけれども、これは日本政府がやったわけじゃない、BBCがやったんですが、世界の中で最もインフルエンスの大きい国はどこかというところでは、単体で日本というのが上がってくる。一番はEUですから、EUは二十何カ国ありますので、それは一概には言えないと思いますが、ジャパンというのが二番目に上がってきているというのは、これは我々なり我々の先輩なり、多くの方々が不断の努力をし続けてこられた結果がこういった評価を得ておるんであって、インドネシア、フィリピン等々、そういった地域におきましては極めて高い支持率が上がっておるという現実は、私どもとしては大変喜ばしい。現実として悪い話もいっぱい聞きますけれども、こういういい話は余り耳に入ってこないので、こういったところは大事なところだという感じがいたしております。

○松原委員 日本に対しての評判というのは、私は、この間ベトナムに行ったときも本当に悪くなかった。ただ、こういった、南京が実態と違って大虐殺があったとか三千五百万とかというのに関して信じているけれども、今の日本は頑張っているねという評価では、これは私は国として不十分だと思うんですよ。やはり、事実なかったものはなかったというふうにやっていかなきゃいかぬ。
 きょうは時間が余りないので南京大虐殺について余り触れることはできませんが、しかし、一冊の本がありまして、これは、アメリカ人で、コロンビア大学を出て、新聞記者、コロンビア大学英文科教師を経て国務省に入って、一九三一年、最初に国民党軍が南京に進駐したころに上海副領事として中国におった方であります。
 この本、原題は「ウエーズ・ザット・アー・ダーク」という名前でありまして、「暗黒大陸 中国の真実」という訳名で日本では発刊されているんですが、その中でラルフ・タウンゼントさんという人が文章を書いてありまして、それが「南京虐殺に関する声明文」というので、その文章の中にこういう声明をうたっているわけですね。
  南京虐殺の真相を広くアメリカ人に知ってもらわんがため、外国人の生命財産に危害を加えられた三月二十四日
これは日本がやったんじゃないですよ、国民党軍の方がやっている話であります。日本の南京進駐の十年前であります。
 我々アメリカ人は、署名のうえ、ここに声明文を記す。この残虐行為は、上官の承認の下、制服着用の兵士によって行われた。南京在住の我々アメリカ人全員がこの目で見たのであるから断言できる。彼らは、外国人の私邸、領事館、学校、病院、会社の事務所を略奪しただけではない。家にも学校にも火を放った。外国人と見ると老若男女構わず撃った。誤射ではない。殺意を持って撃った人殺しである。ある若いアメリカ人娘などは二発も銃弾を打ち込まれ重傷を負った。アメリカ女と見ると強姦する。その他、外国人女に、言葉にできないほどの侮蔑行為を加えた。こうした事件の多くをこの目で目撃した
これは北伐軍の関係とかいろいろと書いてあります。長いですから、今もう時間がないから言いませんけれども。
 こういうふうな南京における虐殺は、日本が南京に入城する十年前に中国人が中国人に対する虐殺であった。いろいろと記述を読んでいくと、極めて統制のとれた、上官の承認書を持って虐殺をされていたということをこのアメリカの副領事をやっていたタウンゼントさんは書いているんであります。
 こういったことも我々は検証して、その記憶がその後の十年後のものにラップされたのかもしれないし、経緯というのは、これはだんだんわからなくなるんです。ですから、私はこういったものの検証をしていかなければいけないと言っているんですが、逆の意味で反日的な検証になるようなドキュメンタリー映画が今つくられようとしているということを最後に質問したいわけであります。
 それは何かというと、これは仮名が「南京プロジェクト」という題名でありますが、このプロデューサーがビル・グッテンタグ、ドイツ語でグーテンタークですから、こんにちはというような意味ですか、おはようございますですか、このグッテンタグ、彼はスタンフォード大学で教鞭をとり、ドキュメンタリー作品を撮り続けている、こういうドキュメンタリー映画監督であります。彼が中心になって、新しいパープル・マウンテン・プロダクションズというところが制作、映画をつくる、南京に関しての映画であります。ドキュメンタリー風につくる。
 その作品主旨においては、大虐殺と呼ばれる状況、これは中国国民党が南京に入ったときの虐殺を映画にしているんじゃないんです、日本が南京に入ったときのことをドキュメンタリー風にしようとしている。そして、大虐殺と呼ばれる状況が起きたことにどのような社会的、文化的背景があったのか、そういったことを西洋人の目から明らかにしていこうということであります。
 これをつくる経緯は、この間ALPHAという話を私申し上げましたが、どうもいろいろなかかわりが裏にあると言われているわけでありますが、こういった映画がつくられて、ある意味、さっき言った、とめられない新しい時代のデマゴーグ、プロパガンダ、反日のプロパガンダが今アメリカで起ころうとする可能性がある。
 表現の自由というのはいろいろとあるわけでありますが、ある国家について全くのうそを書く表現の自由はあるのか。それは、かつて慰安婦を書いた吉田何がしが、本当のことを書いても売れないじゃないかと週刊新潮で言っている、こんなとんでもない話もありました。
 しかし、我々は、くどいようでありますが、我々の国家の名誉と国益に関することですから、この映画に対して、こういったものをどういうふうにつくられるか、まさにそれは我々に対しての国益と名誉を損なう可能性もある。こういった映画がつくられようとしていることに対して、どのような情報をつかみ、どのような対策を講じようとしているのか、外務省、お伺いしたい。

○岡田政府参考人 お答えいたします。
 お話のあるビル・グッテンタグ氏あるいはダン・スターマン氏については、南京事件を題材としたドキュメンタリーを作成したいとして、本年二月来日して、南京事件を研究している我が国の研究者と接触した経緯があるということを承知しております。
 ドキュメンタリーの内容についてはつまびらかにしておりませんが、公平な見方に立った作品がつくられることを希望しております。

○松原委員 それは、日本の政府がハリウッドの映画をつくるのに注文を出すわけにいかないと思うんですよ。
 しかし、ここで問題なのは、そこでつくられた映画が明らかにデマゴーグ的な内容を、彼らも、つくっている側も、自分は正しいものをつくっていると思ってやっていて、実際そこにある資料が、さっき麻生大臣が言ったように、関東大震災の写真を持ってきたり、この間言ったように、あのティンパーリが全く違うところの写真を持ってきて日本が虐殺している写真に使ったというのは、APがそれを否定したことで明らかになっているということを私は申し上げましたが、こういうふうなでたらめな材料にだまされてつくる可能性も極めて大きいと私は思うんですよね。
 こういうふうなものが流れていくと、やはりそれは反日感情というのは、日本に対してはいい国だけれども、かつて日本はナチスみたいなことをやった、李肇星さんが、日本はナチスのヒトラーと同じじゃないかみたいなことを彼は言ったけれども、そういうふうなことを色濃く洗脳されていく。アメリカの世論というのは、ある意味で世界を決める世論であります。日本としては決定的な、重大な世論であります。そういう世論にこういう映画がつくられる。
 だから、それは、例えば織田信長が本能寺で明智光秀に殺されたのは史実だけれども、殺されなかったということを言ったって、それはフィクションだからいいでしょうと言われてしまったら、それだけで済んでしまうかもしれない。しかし、表現の自由という問題と、それぞれの国家のプライドの問題はどういうようになっていくんだ。この辺に関して、なかなか外務省としても答えづらいと思いますが、我々はこういった映画に関してきちっとウオッチをし、言うべきことは、それは外務省が言うべきじゃなくて、ほかのだれかが言うべきかもしれないけれども、やっていかなきゃおかしいと思うんですよ。
 こういうふうな一つの中国の対日プロパガンダが今や行われようとしているということに関して、危機感でも結構であります、麻生大臣、御答弁をいただきたいと思います。

○麻生国務大臣 今、岡田の方からも答弁をいたしましたけれども、基本的にこの種の話は、意図的にやられるという部分もありましょうし、また、深く信じてやっておられる方もいらっしゃるでしょうし、その背景はいろいろなんだと思いますけれども、私どもとしては、こういったものは基本的、歴史的事実に基づいて書いてもらわないと甚だ公平を欠くということだけははっきりしておるし、それが国益を損なうという松原先生の御指摘は全く正しいと思っております。
 日中で歴史共同を一緒にやろうという話が、アメリカも、おれも一緒にやろうということをこの間ゼーリックが言ってきたというのも一つの方向かとも思いますけれども、この種の話は、第三者の目を入れたところできちっといろいろしていくという努力は今後とも続けていかねばなりませんし、そういったプロパガンダを始めて、対日工作というのは、常にこういった世界の中では、平和であろうと戦争であろうと関係なく、いろいろ起こっているということは常に心して事に臨まねばならぬものだと思っております。

○原田委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

○松原委員 以上で終わりますが、こういった情報戦に負けない外務省をつくっていただきたいということを要望して、質問を終わります。
 ありがとうございました。