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山本 賢一氏の活動報告
(関西防衛を支える会)

離 島 防 衛  H22-4-9

 私は本年(平成22年)3月中旬、国防に関心を持つ仲間と共に沖縄に行き、沖縄及び南西地域の防衛を担う自衛隊幹部と面談する機会を持った。沖縄は、私が訪問していない唯一の都道府県であるため、今回の訪問計画には是が非でも参加したいと考えていた。沖縄を訪問し、南西地域の安全保障環境についていろいろと勉強する好機としたかったことも参加の理由である。
 離島といえば、「北方四島」や「南鳥島」、「沖の鳥島」、又、島根県に属しながら韓国によって不法に占拠されている「竹島」、長崎県に属する「対馬」もあるが、ここでは沖縄を含む南西方面の離島の防衛問題について考えてみたい。
 南西方面の島嶼といえば、沖縄本島の西側に存在する八重山諸島、すなわち「宮古島」「石垣島」「与那国島」及び「尖閣諸島」など大小32の島々をまず掲げねばならない。これらの島のうち、有人島は12だけで残りは無人島である。これらの島嶼は台湾に隣接しており、そのうえ中国大陸にも近いだけに防衛担当部署からすれば最も神経を使う場所である。
中でも、最も台湾に近い「与那国島」は台湾まで110キロ余りしかなく、同島の領空域は台湾の防空識別圏と重なり合っているからややこしい。同島は、沖縄本島から530キロも離れており、我が国の領空・領海防衛にとって心配の種となっている。
沖縄における自衛隊の配備状況
 最初に、南西地域防衛の拠点となっている沖縄の防衛態勢について確認してみたい。
 まず陸上自衛隊である。那覇に司令部を置く陸上部隊として第一混成団が存在していたが、本年4月1日から旅団に格上げされた。マンパワーも一段と充実したとお聞きしている。ただ、国境を接する「与那国島」や「宮古島」「石垣島」には部隊配置がされておらず国防上の課題となっている。我が国政府が中国や台湾に気兼ねして離島での部隊配置を遠慮しているようだが、我が国固有の領土を防衛するのに何の気兼ねだというのだろうか。旅団設置とともに離島における防衛態勢を整備して欲しいものである。
 次に海上自衛隊を見てみよう。南西地域の部隊としては第五航空群が那覇に配置されている。この部隊は、対潜哨戒機として有名なP3Cを20機以上保有して広い海域をパトロールしている頼もしい部隊である。それと同時に、保有ヘリコプターによる島嶼の災害派遣や航空救難の面でも活躍している。
 最後に航空自衛隊の現状について触れてみたい。沖縄本島を中心とする南北670キロ、東西830キロという広大な空域を防衛する部隊として南西航空混成団が存在する。この部隊は、那覇に司令部を置き、戦闘機部隊、レーダー警戒部隊、及び地対空ミサイル部隊などによって構成されている。
南西地域における航空部隊の現状について現地で聞いた話を紹介したい。それは、近年、急速に近代化しつつある中国空軍の戦闘機による領空接近が頻発しているとのことである。勿論、レーダイサイトでは24時間体制で警戒していて、中国機が接近するたびごとに那覇飛行場から緊急発進(スクランブル)して領空侵犯を阻止するのだが、その頻度が高まっているのである。ところが、航空自衛隊が使用可能な飛行場は民間と共用の3000メートル滑走路が一本しかない。
米軍が自由に使用できる滑走路は充実しているが、我が自衛隊が使用できる滑走路は極めて不十分な状態である。戦後の占領体制がそのまま温存されている沖縄の現状は、いかにも異常である。早期に改善が必要だ。我が国政府に猛省を促したい。
航空自衛隊の資料によると、平成17年から中国軍機を対象とするスクランブルが急増している。加えて、石油収入を背景に大国化を目指すロシアの軍用機による領空接近(ある時は領空侵犯)も増加していると報告されている。我々が、司令官を表敬訪問するために出向いた際にも「只今、スクランブルがかかっていますので暫くお待ち願いたい」とのことだった。ご多忙の中、我々のために貴重な時間を割いて下さった司令官には「申し訳ない」という気持であった。
 このスクランブルは、なにも中国とロシア機のみならず、最近は台湾機も対象となるとの事であった。前述したように、最も西に位置する「与那国島」の領空と台湾の防空識別圏が重なっているというのだから、意図せざる領空侵犯がいつ起こってもおかしくない。今の台湾は馬英九総統が率いる国民党政権であり、北京政府と協調しようとする姿勢が顕著であるだけに、台湾機にも神経を使わなければならない。本来であれば、台湾政府当局と日本政府がきちんと協議して現地部隊が余計な神経を使わなくてもいいように整理すべきであろう。
離島防衛と中国軍の拡充・・・近い将来、日本近海に中国の空母機動部隊が出現する
 離島防衛で最も警戒すべきは、何といっても中国軍の急速な拡充である。中国の国防予算は最近22年間で24倍にもなっている。2010年の国防予算の規模は5321億元(約7兆円)で日本の予算4兆7千億円の1.5倍であり、しかも実質の国防予算規模は公表数字の2倍以上というのが国際社会の常識となっている。米国の防衛関連報告書でも明記されている。
 まず海軍である。中国海軍は、水上艦艇ばかりでなく、潜水艦戦力の拡充にものすごい予算を投入している。中国が保有する新型潜水艦は、ロシア製の「キロ級」(ディーゼル)と、国産の「晋型」と「商型」という原子力潜水艦である。これら新型潜水艦は、1998年には僅か4隻だったものが、2008年には28隻と急増している。これに比べて、我が国は同期間、9隻から16隻へ増加したものの戦力は完全に逆転されてしまった。しかも、新型は従来型に比べて静粛性能に優れていて探知が難しい。さらに、対艦ミサイルや核搭載の弾道ミサイルを装備していることから米軍も警戒をしている。
 海上艦艇も著しい増強が図られている。駆逐艦やフリゲート艦、及び洋上補給艦を拡充して外洋での作戦能力を急速に伸ばしている。加えて、揚陸艦艇を増強しているので離島防衛にとって大きな課題を突きつけている。東アジアにおけるパワーバランスは大きく中国に傾きつつある。
 次に中国の空軍である。SU27、SU30といったロシア製の新型戦闘機ばかりでなく、J10という国産戦闘機も配備して急速に戦闘能力を強化している。1998年時点での第四世代戦闘機保有数は46機だったのが2008年には391機まで増えている。我が国の2008年時点での第四世代戦闘機数は282機であるから、すでに新型(第4世代)戦闘機の分野で中国は我が国を超えている。
 その上、空中給油機、早期警戒管制機、第五世代戦闘機(米国のF22のようにレーダーが補足しにくい性能を持つ)の導入などによって電子戦能力、情報収集能力を向上させており、離島防衛にとって一層警戒が必要となっている。
加えて、中国軍は空母の実戦配備に向けて着々と準備を進めており、一部報道によると、2012年には国産空母2隻とロシアから購入した中古空母1隻、合わせて3隻の中型空母を実戦配備する計画とのことである。すでに艦載機の選定、生産に着手し、かつパイロットの訓練も始まっていると報じられている。
日本の国土防衛は十分か
 対する我が国は、国防予算を減少させており、国家としての離島防衛に大きな懸念材料となっている。
 専守防衛という基本政策を有する我が国では、米軍による安全確保機能が期待できるということなのか、中国の軍拡に対して感度が鈍いという大きな問題を有している。
 数年後には東シナ海において中国の空母機動部隊が出現することは間違いないことである。離島防衛に手を抜くと、ある日突然、中国の揚陸艦が我が国の離島に中国軍を運び入れるという事態さえ想定できる。
 「平和的台頭」を標榜する北京政府だが、米国の東アジアにおける軍事プレゼンスが弱まることになれば、どのように豹変するか予断を許さない。いかなる事態になっても対応できるだけの備えが必要である。自国の領土・領空を守るのは我々自身であるという強い意志を持って体制整備に注力してもらいたい。
 国民一人一人の生活や経済活動は、国内の治安ばかりでなく、国全体と領海、及び周辺海域が安定していなければ成り立たない。これはどんな政権であっても変わらない基本中の基本である。勿論、現在の鳩山政権においても同じである。「友愛」を標榜しつつ、国防の基本を忘れるならば大きな禍根を後世に残すことになる。日本人の一人として絶対に容認できないことである。
 我が国の安全保障環境を冷静に眺め、長期的視点で現実的な戦略を練るという地道な作業と議論の積み重ねが求められている。しかも、残された時間は少ないことを肝に銘じるべきだ。
(兵庫県芦屋市にて)