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三澤 廣氏の活動報告
(作家)

  味噌も糞もセクハラ (H30-6-14)

味噌も糞もセクハラ               

 福田淳一財務事務次官と米山隆一新潟県知事がセクハラをしたということで、辞職しました。この二人に対するマスコミの報道がまさしく「ダブルスタンダード」の典型なので、「これはひどい」と私は呆れています。
 福田氏は女性記者に対して卑猥な言葉をかけたという罪です。
 それに対して、米山氏は出会い系サイトで知り合った女子大生に援助交際をしました。
 私はつねづね、さまざまなレベルの行為を「セクハラ」という言葉で一括りにしてしまうことに疑問を懐いています。
 政界・財界・官界のセクハラで一番悪辣だったのは、旧聞に属しますが、コメディアン上がりの府知事が、自らの選挙の際に、車の中で自分の応援をしてくれている女性に触ったという事件だったでしょう。微妙な権力関係によって逃げることができない女性に、毎日毎日、同じ行為を繰り返したのです。
 同じ頃、高名な経済学者が、電車の中で痴漢をして逮捕されました。マスコミに散々に叩かれて、大学を馘になってしまいました。
 判決は、府知事には執行猶予がつきましたが、経済学者は実刑でした。経済学者の方は常習犯だったこともありますが、府知事だって前々から女癖が悪いことで有名でした。
 府知事の被害者は一生の心の傷を負ったことでしょう。それに対して、経済学者の被害者は友達に向かって、「あれ私なのよ」と笑って言うことができたに違いありません。
 いや、そう言っただけで、弾劾されることは分かっています。セクハラは絶対悪だということになっていますから、セクハラのレベルに「上中下」があると言っただけで、女性の権利を蹂躙するのかと恫喝されてしまいます。しかし、レベル分けをしてはいけないというから、本当に悲惨な目に遭った被害者が救済されないのではないでしょうか。
 福田氏は、昵懇な女性記者に向かって言ったのです。昵懇とは言っても、仕事の上でたびたび会っていたというくらいではあります。しかし、二人切りで会食することが習慣になっていたと言いますから、冗談を言える仲だったことは間違いないでしょう。
 だからと言って、卑猥な言葉をかけていいということにはならないことはもちろんです。しかし、福田氏の罪は、親しさのレベルを読み間違えたということに尽きるのではないでしょうか。(読み間違えさせられたと言った方が適切かも知れません)
 夫婦や恋人同士の間でも、卑猥な言葉をかけてはいけないのだろうかと首をかしげてしまいます。夫婦間でもセクハラは成り立つという説もあるそうですが、どんな夫婦でも、仲が悪くなった後で、「あのときセクハラされた」と訴えることが可能になってしまいます。
 女性の中には、福田氏は「風俗へ行って言えばよかった」という声があります。
 それは、言い換えれば、「金を払えばセクハラをしてもいい」ということになります。売買春は法律的にも道徳的にも許されないことになったというのが現代の常識です。つまり、「金を払っても女性の体を自由にしてはいけない」という合意ができているのです。そうだったら、キャバクラでホステスに卑猥なことを言うのも許されないのではないでしょうか。
 進歩派の方々は、「慰安婦は、強制連行がなかったとしても、売春をさせたことは間違いないのだから、許されないことだった」と言います。しかし、そういう人は、現代日本に跋扈する売買春をどうして糾弾しないのでしょう。
 アジアの女性の人権を踏みにじったと言いますが、本当にそれを憤っているのなら、東南アジアへの男性だけのツァーなどは、成田空港で体を張って阻止すべきではないでしょうか。また、言うまでもなく、歌舞伎町の風俗産業に東南アジアの女性が異様に多いことは誰でも知っています。「風俗廃絶」をなぜ叫ばないのですか。
 米山氏は援助交際をしていたのです。実質的には売春です。犯罪です。なぜ警察が動かないのでしょう。言葉だけの福田氏より金で女性の体を弄んだ米山氏の方がはるかに罪が重いと私は思いますが、識者はそうは見ていないようです。マスコミも福田氏には厳しく、米山氏には甘いのです。
 もちろん背景は一目瞭然です。米山氏は、原発に批判的なリベラルです。もとは保守で、維新の党から国政選挙に出るほどだったのに、立身の機会が訪れたとなると俄かに左傾したのですから、沖縄県知事にも非常によく似ています。リベラルだからマスコミが応援するのです。
 辞職した後になって、「米山純愛説」が出て来ました。米山氏は本当に女子大生に恋をしていたのだから、売春には当たらないというのです。リベラルのダブスタは荒唐無稽な手法を弄しているとしか言いようがありません。
 さらに、もっと大きな目でダブスタを眺めてみましょう。福田事件なんぞ、芸能界では日常茶飯事の出来事ではないでしょうか。バラエティ番組の司会をしている有名人なら誰もがしていることです。
 先日、みのもんた氏がパワハラ・セクハラをしているということで問題を引き起こしましたが、あれはたまたま息子が犯罪を犯してしまったので、その叩きついでに叩きやすくなった「水に落ちた犬」だったからです。
 特にコメディアン系の司会者は、出場した一般人の女性に、驚くほどの卑猥な言葉をかけています。どうして、芸能人なら許されるのでしょうか。今回のTokioの件にも見られる通り、芸能人は性犯罪を犯してしまうことが多いのですが、ふだんから何をしても許されると思っているからでしょう。
 赤坂のホテルのロビーで、鋭い目の中年男が立っている。そこに若い美人が近づいて行き、一緒にエレベーターに乗り込む。これはプロデューサーやディレクターが、芸能人志望の女性に、仕事を与えるのと引き換えに体を要求したのです。さる女優は、後輩から「女優になりたい」と相談を受けたときに、「あなた、初対面の人と寝れる?」と訊いたそうです。
 何といういい加減な社会なのでしょう。社会全体が性欲の塊になっているのに、たまたま発覚した場合だけ罰せられるという、この偽善だらけの日本がいやになってしまいます。