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三澤 廣氏の活動報告
(作家)

 三澤 廣氏の一覧


暴力とスポーツと政界  (H30-8-14)


暴力とスポーツと政界    三澤廣
 日本漢字能力検定協会のキャンペーンで、「今年の漢字」というのがあります。いつも私の予測は外れてしまうのですが、実はこのキャンペーンで決まった漢字よりも、私の外れた漢字の方が適切なのではないかと自負することが多いのです。
 平成二十六年(二〇一四)は「税」でした。消費税の増税が決め手になったとのことです。私にはあんまりピンと来ませんでした。
 私の予想は「捏」でした。朝日新聞が慰安婦報道を「捏造とは認めなかったが、誤報だと認めた。でもやっぱり捏造だった」という記念すべき年だったからです。それだけではありません。小保方晴子氏、佐村河内守氏の嘘八百が発覚した年でした。佐野研二郎氏は翌年のことだったでしょうか。
 今年、平成三十年(二〇一八)の漢字は、どうせ外れる私の予測では「暴」です。暴力というものが、これほど集中的に話題になった年は珍しかったのではないでしょうか。今年はまだ半年近く残っているのに、いろんなことがありましたよね。
 まずは「伊調馨さんは選手なんですか」で有名になった至学館大学レスリング部のパワハラ事件。そして、日大アメフト部の反則タックル事件と日本ボクシング連盟の不正疑惑がその頂点です。
 谷岡学長は女性ながら独裁者の典型。栄氏がその暴力装置。また、日大の田中理事長、アメフト部の内田監督、日本ボクシング連盟の山根会長。女性を除いた四人が四人とも、見るからにコワモテで、中には暴力団と親しい人もいるとのことです。
 こんな人たちが、教育機関や、全国的なスポーツ団体のトップに座っているのです。これだけ悪事が発覚したのに、半数はまだその地位に留まっています。日本のスポーツ界には構造的な欠陥があるのではないでしょうか。

 国会議員に元レスラーが多いのに驚きませんか。私は少なくとも(過去の人も含めて)四人知っています。他のスポーツの選手もいますが、プロレスが異様に多いのではないでしょうか。
 私は参議院の青山繁晴議員をインタネットで見て、つねづねその正論に拍手を送っていましたが、最近、あまりの大胆な発言にホトホト感心しました。
 氏はアントニオ猪木氏について、次のように発言しています。

 こんな人を当選させた有権者ももう一度考えた方が良いと思う。日本維新の会の橋本さんも、石原慎太郎さんももちろん考えなければならない。当選しそうだということで、こんな人を議員にしてはいけない。この人を6年間私たち国費で支えるのですから。

 青山議員、国会の通路で猪木氏と擦れ違ったとき、怖くないのでしょうか。エレベーターの中で二人切りになったら、どうするのでしょう。いやいや、まさか国会の中で暴力行為に及ぶとは思いませんが、猪木氏に睨まれただけでも、私だったら、身の毛がよだってしまいます。
 猪木氏は政府の自粛勧告を無視して、たびたび北朝鮮を訪問しています。英雄になって票を稼ごうという魂胆です。青山氏はまさにその点を衝いたのです。
 維新の党には威勢のよい議員が多いと言われます。そして、みんな猪木氏のスタンドプレーには辟易しているのに、怖いから言えないのです。それだけに、青山氏(自民党)の勇気には敬服します。

 「暴力行為に及ぶとは思いませんが」と言いましたが、過去に実例はありました。
 かの浜田幸一氏が、昭和五十九年(一九八四)に、(国会内ではありませんが)、自民党本部の中で、法務大臣を殴打したという事件です(インタネットで「法相殴打事件」を見て下さい)。
 このときは、被害者の法務大臣が、自分の発言が不適切だった(から浜田を刺戟した)ということで、加害者に謝罪してしまいました。発言が適切であろうとなかろうと、国会議員の暴力行為をどうして放置しておいてよいものでしょうか。なんで被害者が謝罪するんだ、と私は悲憤に堪えませんでしたが、法務大臣も後難を恐れたのに違いありません。
 それにしても、衆議院は辞職勧告決議をしなければいけなかったのです。浜田氏は共産党議長を侮辱する発言までしているのに、共産党もやっぱり浜田氏が怖かったようです。
 マスコミも何も言いません。記者も浜田氏が怖いので、争いたくないのです。何ということでしょう。
 浜田氏は若い頃から暴力的傾向があったと言われます。昔のことですが、それを公認してしまった自民党の無定見には驚かされます。

 朝日新聞は石原慎太郎氏とは正反対の立場なのに、及び腰でしか批判できません。氏は朝日の記者を面と向かって罵倒するので、記者が編集局に「悪口書かないでくれ」と頼むのだと聞いたことがあります。なにしろ氏は「文明の生み出した最悪のものはBBだ」という驚くべき女性差別発言をしているのです。(女性も慎太郎氏には甘いんですよね) 他の人だったら、一発で政治家として再起不能になりますよ。マスコミが沈黙を守っていたのはあまりにも勇気がないのではありませんか。
 舛添要一氏は海外旅行で贅沢の限りを尽くしたと批判されましたが、慎太郎氏はもっと派手に金をばらまいたとのこと。誰も何も言いませんでした。

 日本では、暴力行為は「やんちゃ・腕白・元気がいい」というほほえましい評価ですまされてしまうことが多いようです。だから、「温かい目で見守ろう」というわけ。中学校のいじめが放置されているのも、日教組が「国家権力(警察)を教育の場に導入してはいけない」と言うからです。
 いじめの加害者が被害者を死に追い込んでも、「将来のある若者だから」という理由で、なかなか逮捕には至りません。
 少なくとも、政界では、「学生時代にいじめの加害者として問題を起こした者は、どの政党も公認しない」というルールを作ってもらいたいと思います。「若気の至り」で済む問題ではありません。いじめの被害者は精神的にダメージを受けることが多いのです。加害者は「国会議員になれない」というくらいの代償は払ってもいいではありませんか。中学生の間に「いじめをすると将来がやばいぞ」という噂が広まればしめたものです。

 最近、さる女性代議士の夫が元暴力団員だったということで、週刊誌に取り上げられています。代議士が媚中派だったからでしょうか、テレビではほとんど取り上げられません。
 インタネットの書き込みを見るとあっけに取られます。もちろん、非難の声が高いのですが、結構弁護論が見られます。「元だから、(更生しているのなら)、いいのではないか」「夫と本人は別人格だから責任はない」。挙句の果てには、「何が問題なの」という書き込みまでありました。
 「相手がどんな人であっても、愛は美しい」という意見もあります。美しいのなら、それは結構な話です。しかし、一方では政治家には社会的責任というものがあるのですから、愛を貫いて、その代償に政治家をやめたらどうでしょうか。まして、この人は将来の首相候補との声まであったのですから、「日本てどんな国なの」と絶句するしかありません。
 暴力団組長と一緒に写真を撮っただけでも、国会議員はマスコミの攻撃に晒されます。それなのに、どうして、元暴力団員と結婚していい道理がありましょう。「『元』ならいいじゃないか」という人には「ナイーブなこと言いなさんな」としか言えません。

 さる女性歌手は、自分でもちょっと問題を起こしてしまったのですが、亡き父親が元暴力団組長である上に、復帰しそうになると、やはり暴力団員の弟が警察沙汰を引き起こすので、なかなかテレビに出られません。
 しかし、父親や弟が何をしても、本人には責任はありません。それに対して、夫や息子が犯罪を犯した場合には、本人の責任も問われるべきでしょう。(夫って、自分が選んだのですからね)
 そして、この女性代議士の場合は、高校生時代に本人が陰惨ないじめをして、被害者を精神的な病気に追い込んだり、自主退学を余儀なくさせるというような事件を繰り返していたとのことです。この人の選挙区の有権者に訊きたいのですが、「夫が暴力団・自分がいじめ」という最初の報道の後の総選挙で、どうして、圧倒的な支持を与えて、議席を維持させたのですか。今度は第二弾の報道が出て、全国民の知る所となりました。
 でも、次の選挙、やっぱり当選しそうな気がします。本人、総裁選挙に出るつもりだったのが、「もうどうでもよくなっちゃった」と言っているそうですから、是非ともこの辺で引導を渡してやって欲しいのです。

 アメフト、ボクシング、プロレスを問題のあるスポーツとして取上げましたが、さわやかな青春の象徴である高校野球が暴力の温床になっていることは誰でも知っています。
 相撲界では、女性が土俵に上がれないということに、批判が集まっています。しかし、高校野球では、女生徒は参加できない。ベンチに入れない。試合中は補助的な手伝いすらできないのです。それが批判されないのは、朝日新聞・毎日新聞が仕切っているから、言論が封殺されているのです。
 男の汗臭さに興奮する女性ファンは、その中に女の汗の臭いが混じっていたら、陶酔することができなくなってしまいます。つまり、営業上の理由で女性を入れることはできないのです。伝統を守ろうという理由で女を土俵に上がらせない相撲協会は、金目当ての朝日・毎日や高野連に比べれば、ずっと罪が軽いのではないでしょうか。

 学生スポーツの選手は「礼儀正しい」と言われます。その実態は、暴力的支配が行われているために、礼儀正しくしないと制裁を受けるからです。試合前に、一糸乱れずマウンドに駆け寄って整列する高校野球の選手の姿は帝国陸軍を髣髴とさせます。
 そもそも、戦前、学生スポーツには、先輩後輩の厳しい掟はなかったのに、戦後になってにわかに封建的な運動部が成立したということです。それは、学徒動員で戦地から帰って来た学生たちが、兵営の暴力を持ち帰ったことから始まったのです。学生スポーツそのものが、軍国主義に根ざしているのに、軍国主義を弾劾する新聞社がそれを主催しているというのは奇妙なことです。いや、ウラのウラを考えれば少しも奇妙なことはないのですが。
 強豪私立高校の中には、東北や関東から甲子園までバスを仕立てて、一般生徒を応援のために強制連行することがふつうになっている所もあります。野球部の生徒は暴力的な者が多いですから、青山議員のようなよほどの根性を持っていない限り、強制連行を拒絶することはできません。

 平成二十五年(二〇一三)、女子柔道強化選手に対する、指導陣による暴力とパワハラの問題が発覚しました。選手たちが匿名で告発したのですが、このとき、橋本聖子参議院議員は自民党参院議員総会で、「訴えるということは非常に大きな責任がある。プライバシーを守ってもらいながらヒアリングをしてもらいたいということは決していいことではない」と言いました。
 暴力団のような指導陣から暴力を揮われた被害者、しかも女性に、「堂々と名乗らないのは卑怯だ」と無理難題をふっかけたのです。
 このとき、元オリンピック柔道選手で、JOC理事をしていた山口香氏は、「(実名を)公表しても選手の不利益にならないと保証されておらず、時期尚早と思う」と言って選手たちを庇いました。
 私には、スーパーガール(スーパーマンの従妹)が、魔女に捉われたヘンゼルとグレーテルを救うために、颯爽とマントを翻して飛んで行く姿が連想されて、すっかり山口さんのファンになってしまいました。
 魔女の方は、その三年前のバンクーバー冬季オリンピックで、スノーボードの國母(こくぼ)和宏選手がルール違反を繰り返して、選手団を混乱に陥れたとき、「やんちゃ」な國母に寛大な裁定を下したことで有名になりました。権力と暴力に甘いスポーツ関係者の実態を如実に表していました。
 しかも、この魔女は、パーティの席上で、フィギュアスケートのイケメン男子選手に、暴力的なキスをしたのです。平成二十六年、「捏」の年のことでした。男女が逆だったら、犯罪として捜査の手が入る所でした。いや、ジェンダーフリーのこの世の中ですから、魔女も責任を追及されて然るべきだったのですが、政治力で乗り切り、未だに参議院議員(党議員会長!!)を務めています。

 このように、男も女も暴力だらけの現代日本です。そして、スポーツがその下地になっているのは驚くべきことです。
 「スポーツは神聖だ」「スポーツマンは爽やかだ」という人がいます。私はスポーツマン・スポーツウーマンに人格の優れた人を見たことがありません。(いきがかり上、山口香氏は例外だと言っておきましょう) 栄・田中・内田・山根みたいな連中が異様に多いのです。

 オリンピック金メダリストの村田諒太君が山根会長に反抗して会長から凄まれています。山口香さんと橋本聖子さんのような関係なので、応援しています。
 村田君は、中学の頃は不良だったということです。「見事に更生した」と言われますが、私は、いくら応援していると言っても、更生したことに感動するほどのナイーブではありませんよ。そりゃあ、チャンピオンになれれば不良も簡単にやめられるでしょうから。村田君、もし、不良だった時代に、いじめなどで友達を不幸にした過去があったら、告白して、この社会問題を解決するために働いて下さい。

 相撲協会と貴乃花の関係も、山根会長と村田君の対決に似ています。貴乃花は最後の土壇場になって、弟子が不祥事を起こしたために、「なーんだ、他の部屋と同じじゃないか」というみじめな結末に終わってしまいました。しかし、貴乃花にも非があったからと言って、相撲協会の腐敗が嘘だったことにはなりません。
 貴乃花が相撲協会と対決していた頃、奇妙なことに、ニュースキャスター、アナウンサー、コメンテーターなどの大半が、相撲協会の味方をしていました。
 そして、私の僻目でしょうか、相撲協会を弁護する識者の大半が、「媚中派」だったように思えるのです。「媚中派」の中では、玉川徹氏だけが、貴乃花を支持していましたから、「この人は自分で考えて言っているのかも」と思った記憶があります。(ふつう媚中派は、条件反射で強い方に追従するだけなのですが)
 日本のリベラルは、日本政府は弱腰だから叩く。中国政府はコワモテだからへつらう。だから、必然的にコワモテの相撲協会寄りになるのです。つまり権力が大好きなのです。日大やボクシング協会は、媚中派からも支持されませんが、この場合は、媚中派の方に、「もうすぐぽしゃるから、コワモテだからと言ってへつらう必要はないだろう」という計算が働いているようです。
 リベラルのモットーは「長い物には巻かれろ」なのです。
 ところで、インタネットで見ると、平成二十一年(二〇〇七)に上架された「北京五輪を支援する売国媚中議員紹介」のリストがあります。もちろん野田聖子氏は入っているのですが、橋本聖子氏の名前も見つけました。
 「なるほど。なるほど。なるほど」と何度も何度もうなづいたものでした。
 因みに、至学館大学の谷岡郁子学長は、慰安婦問題に熱心な媚韓派です。元参議院議員ですが、民主党です。やっぱり。