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三澤 廣氏の活動報告
(作家)

  教皇の背信(R2-8-11)

 前回寄稿した「キリスト教会の反キリスト」では、日本のキリスト教界の世俗権力におもねる魔訶不可思議を解明しようと試みました。
 今回は、日本のキリスト教ではなく、ローマ教皇庁(法王庁/バチカン)の闇を探求します。

 七月五日、教皇庁の日曜ごとに行われる「正午の祈り」で、フランシスコ教皇が、予定原稿に含まれていた「香港国家安全維持法」への言及を避けて、その部分を読まなかったという事件が起こりました。(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071700710&g=int)
 原稿を配布されたイタリア人記者がブログで暴露したのですが、その内容は「香港での複雑な情勢の推移を、特別な注意を払い懸念を抱きつつ見守っている」というだけのことで、特に中国政府を刺戟する内容ではありませんでした。それなのに、中国政府との和解を何よりも重視する教皇は、日本のマスコミのように、これをスルーしたのです。

 日本での反応はどうだったでしょう。
 新聞もテレビもまたまた「報道しない自由」を行使したので、現に当初は、私も気づかなかった程度の記事しか出ませんでした。
 ところが、驚いたのなんのって、外ならぬ朝日新聞がこの「媚中政策」に異を立てたのです。八月八日の朝刊「多事奏論」で、論説委員の郷富左子氏が事件の詳細を解説してくれています。
 郷氏はまず、1978〜2005年の長きに亙って教皇の位にあったヨハネ・パウロ2世の事績に言及します。同教皇は、2003年に、新枢機卿三十一人の名を発表しましたが、その最後に「イン・ぺクトーレ(ラテン語 in pectore)」と記された、名前のない人物がいたそうです。「胸の中」という意味なのでが、「秘密」というニュアンスで使われるそうです。
 この人の名を明かさないまま、ヨハネ・パウロ二世は亡くなりました。その筋の情報では、中国の地下教会の神父で、発覚すると罪に問われる懸念があるので、秘密にしたのだろうと言われています。

 それに比べると、フランシスコ教皇の卑屈さはいったいどうしたことでしょう。中国政府は全国到る所でキリスト教を迫害し、教会を破壊するような蛮行を繰り返しています。中国政府の意を体した「愛国教会」が政府の御用を務め、真の信仰を求める「地下教会」の信者たちは投獄・拷問の憂き目を見ています。

 これを「戦前の日本と同じだ」と評する人がいますが、戦前の日本はそんなひどいことはしませんでした。私には、江戸時代の切支丹迫害に近いように思われるのです。
 フランシスコ教皇は、地下教会を見捨てました。日本のカトリックや日本基督教団が拉致被害者を見捨てたのに似ています。
 しかも、キリスト教ばかりでなく、イスラム教、ラマ教に対する非道な虐待は目を覆うばかりのものがあります。中国政府は信仰の敵、全宗教者の敵だと言っても過言ではありますまい。地上から宗教を放逐しようとしているのです。

 2018年にフランシスコ教皇は中国政府と「暫定合意」を結び、実質上、地下教会の存在を否認しました。逆に、愛国教会の神父は中国政府が選定してバチカンに通告し、バチカンは「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」に関してだけ、中国政府に再考を促す権利を持つというものです。中国政府がカトリックの神父を選ぶのです。

 第二次世界大戦の最中に教皇を務めたピウス(ピオ)12世は、ナチスに協力したことで有名です。
 前教皇のベネディクト16世(2005〜2013)はピウス12世の列福・列聖をためらいました。もちろん、ピウス12世だって、私利私欲からナチスに迎合したわけではありますまい。全カトリックをナチスから守るための已むを得ない妥協だったと思われます。
 しかし、それでも、ユダヤ人大虐殺を招いた結果責任を考えれば、列福・列聖は納得の行かないことです。ことさら非難する必要はないまでも、褒め讃えるのはおかしなことです。

 フランシスコ教皇の媚中政策は、ピウス12世のナチス迎合に匹敵します。いやいや、あの時ほど切羽詰まっているわけではないのに、無意味な迎合をしたのですから、その罪はピウス12世に倍するものがありましょう。それなのに、バチカンの大勢は、また特に媚中・媚朝に染まった日本のカトリックの大勢は、「右の独裁は許されないが、左の独裁はかまわない」というかつての過激派の思想を振りかざすのです。
 このバチカンと中国政府の臨時合意は来月9月21日に期限が切れるとのこと。バチカンは延長を望んでいるのですが、香港問題やコロナなどで、中国側は乗り気でなくなっているそうです。そこで、バチカンはいよいよ中国の気を引くために甘言を弄しているのです。

 「香港国家安全維持法」といえば、日本では、共産党も立憲民主党も朝日新聞も(お義理とは言え)反対を表明しています。日本人の中で見て見ぬふりをしているのは、日本カトリック中央協議会と日本基督教団だけです。なんのことはない、カトリックの世界的な親玉もそれだったのですね。

 郷氏はこの論文の最後でこう言っています。
 「香港で自由と人権が脅かされているなか、その思いを「胸のなか」におさめず、いまこそ発して欲しい」
 朝日の偉いさんと言えば、木村伊量(ただかず)、若宮啓文、杉浦信之、清田治史(はるひと/知らなかったらWikipedia)のような、言論の自由を鴻毛の軽きに置いて、白を黒と言いくるめる人たちばかりだと思っていましたのに、郷氏のような毅然とした女性が論説委員をしていらっしゃると知って感動しました。
 朝日新聞にもわずかながら良心が残っていたのです。

 それにしても、例外的な良心を持つ編集委員とはいえ、あの朝日、誰もが認める中国の走狗たるあの朝日新聞から、媚中に過ぎるのではないかと批判されるカトリックとはいったいどんな存在なのでしょう。
 敢えてここまでお書きになるからには、郷氏は、日本カトリック協議会、就中(なかんずく)「正義と平和協議会」にも反撥していらっしゃるはずです。
 朝日よりも偏向したカトリック。
 カトリックは、信者は保守的な人が多いのに、聖職者は左寄りばかりだと言われます。

 中国のカトリック信者は愛国教会・地下教会を合わせて1000万人に及ぶということです。日本のカトリックは45万人です。中国の人口は日本の10倍ですから、人口比では、中国には日本の二倍の信者がいることになります。
 内訳もインタネットで調べることができます。愛国教会500万、地下教会500万以上。他のキリスト教徒は、プロテスタントや正教会など合計一億人を超えるとも言われます。カトリック以外にも地下教会は多く、一億人を超える全クリスチャンの中で、三分の二が地下教会に属しているとのことです。
 バチカンが媚中政策を貫けば、地下教会の信者が摘発されるばかりでなく、愛国教会の信者たちも中国政府の指導の下に、厳しい監視の目にさらされることになります。カトリック以外のクリスチャンもその余波を受けて、弾圧が激しくなることでしょう。
 愛国教会は、江戸時代の「宗旨人別帳」や「寺請制度」のように、真のクリスチャンではないことを証明する卑劣な存在へと堕して行くに違いありません。

 バチカンも、そして、特に媚中のひどい日本のカトリック教会も、神の前に恥じる所はないのでしょうか。ダンテ「地獄篇」では、たくさんの教皇が地獄に落ちていたそうです。
 フランシスコ教皇様。岡田大司教様。恐くないのですか。

 カトリック信者の方々に申し上げますが、そろそろ信者が団結して、第二の宗教改革を決行する時が来たのではないでしょうか。
 彼らのやっていることと言ったら、免罪符を金で売っているのと何の変りもありません。