■新憲法の条文づくりは、新教育基本法の条文づくりにつながる
 
 〜自民新憲法草案まとまる〜

自民党は昨28日、新憲法草案を発表した。本日の各紙とも、評価すべき
点、これで国民に訴えられるのかなど、様々な取り上げ方をしていたが、いず
れにせよ現憲法施行後、主要政党による初めての改正案ということもあり、新
憲法制定に向けた一歩を踏み出したことは確かであり、その試みは大いに
歓迎していい。

 草案のうち「前文」については、「最高の政治的決断」ということで、中曽根元
首相らかせ中心となってまとめた原案から、日本の歴史、伝統、風土といった
保守色が排除され、起草委総会でも不満が出たという経緯もあり、勿論、不十分
な内容であることは否めない。「天皇=元首」の明記や有事や大規模災害時に
首相が緊急事態を宣言する「国家緊急事態」の規定や家庭の条項を見送った
ことも、他党への配慮が見え隠れしていることも受け取れる。
 
 しかし、産経紙社説でも指摘しているように、前文で「日本国民は、帰属する
国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る」責務を共有するとし、
国防の責務を明確にした点、「国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現
のため、協力し合う」ことを明記し、国際協調主義を明確にした点、国のかたちに
ついて、1条で象徴天皇と国民主権を堅持した点、また改正の核心部分である
「自衛軍保持」を明記し、「自衛軍」に集団的自衛権の行使や海外での武力行使
を認める考え方を盛り込んだ点、新しい権利・義務として知的財産権や国民の
責務を盛り込むとともに、国会の改憲発議要件として衆参各過半数の賛成とした
点など、現行憲法の抱えている課題を越えようとしている箇所は随所に伺える。

 少なくとも現行憲法が占領軍による草案から作られたが故の他国への平和依存
体質、即ち自らの意志で守ることのできなかった国防体制から脱却し、わが国の
かたちを明確にすることができるはずだ。少なくとも、国民は今、憲法問題に関心
を持っていることは確実だ。現状では、まだまだ各党派がそれぞれが草案を出す
「作文憲法」提案の時代であろうが、明治憲法が制定される際も自由民権運動と
連動して私疑憲法の時代が暫く続き、国民の間で憲法制定の地熱が高まって
いった歴史がある。この自民党の新憲法草案の提案が民主、公明への強い波及
効果となっていき、次の参院選や衆院選での争点が憲法問題になってほしいものだ。

 さらにこの新憲法草案の内容は「愛国心」「歴史、伝統、文化」「家庭」「宗教的
情操」
など現行の教育基本法改正の課題と直接に結び付いた問題でもある。従って、自民
党は新憲法草案づくりの論点そのものが教育基本法改正の論点であることを十分に
認識して、新憲法の条文づくりだけに精を出すのではなく、それがそのまま、教育基

法の条文づくりにつながり、どうしたら教育改革ができるのかという大きな問題が背

に横たわっていることを再認識して頂きたいと思う。