■生き別れとなった姉妹の生き様に、貧しかった日本人の姿を見た
      
    〜NHKドラマ「ハルとナツ」を見て〜

昨7日の産経紙で昨日までの夜のNHKドラマ「ハルとナツ」(5夜連続)について

感動的なコラムが掲載され、いちいち感動した。小生も2回目から熱心に見ていた。
コラムにある通り、戦前、家族とともにブラジルに渡った姉と、水疱瘡にかかって一
人だけ日本に残ざるを得なかった妹の人生を描いたものである。
 ブラジルに渡った家族は一緒に亙った日本人とともに、コーヒー農園や未開に等し
いファジェンダで必至になって開墾し、ほとんど生活の糧だけで収入も得ることので
きない中で、戦争が勃発、必至になってコーヒーの収穫をしてきた農場から追い出さ
れ、さらに奥地で入植していく。
 北海道に残された妹は、叔父さん夫婦の家庭に預けられたものの、冷遇され、家出
をして一人の牛飼いの初老に出会い、戦後はそこからヤミ市をし、製菓会社を興して
いく。

 生き別れになってから、70年間、姉妹はお互いに手紙を出し合うのだが、結局、そ
の手紙が届かず、お互いに音信不通となってしまっていたが、70年ぶり姉が来日し、
妹と再会し、今までお互いに歩んできた人生を語り合いながら、越し方の生き様が
オーバーラップされていくもので、このドラマがフィクションであるといいながら、
非常に心打つものがあった。

 原作者の橋田壽賀子さんによれば、最も描きたかったのはブラジルの過酷な環境下
で一生懸命生きた姉妹の父親の忠次だったというが、日本が戦争に負けたことを最後
まで信じなかった「勝ち組」が日本人から捨てられているにもかかわらず、日本を愛
して愛して愛して死んでしまう人であった。

 息子が帝国軍人として日本で活躍していることを誇りとしていたが、占領後、上官

あった元中佐が遺品を抱いてブラジルにやって来る。その時に息子の戦死を知った
が、なんの恨み言も胸にしまい込んで、2人で「海ゆかば」を歌わせたが、自然と涙
がこぼれた。
 こんな父親のような日本人が今はいないのであると実感した。

 生活は貧しかったが、姉もブラジルに渡った家族の息子と結婚し、日本の代表的な
花である菊の生産がようやく軌道に乗った中、夜のシアターで入植地の日本人ととも
に、皇太子殿下のご成婚パレードを記録映画を見るシーンがある。その夜、父親は、
お世話になった先輩の日本人に「やっぱり、大東亜戦争で日本は負けなかったのでは
なかったのか」と語る。その理由が、こんなにも早く復興した日本の様子を見ての言
葉であるが、遠くブラジルの地にいて、日本のことを心配し、日本へのこの上のない
愛情がなければ、こんな言葉は吐けまい。父親はこの夜、幸せな気持ちで亡くなっ
た。

 今は当たり前のようにブラジル日系人の活躍が耳に入るが、戦前から多くの日本人
の苦労があって、ブラジル社会に受け入れられていのだと思った。

 姉妹は、一夜、語りつくせない思いのまま、分かれたが、その直後、すぐに妹が経
営していた会社が吸収合併となり、また一人のなった妹が70年ぶりに初めてブラジル
に渡ったところで話が終っていた。2人の語らいの中で、「今の人達は日本が貧し
かった時代を忘れてしまったから、みんな勝手に生きている」という部分があった
が、ここが今日、繁栄した時代になるまでの歴史をもう一度、振り返ることが必要で
はないかという原作者の真意が込められているように思った。

 また父親が最後まで、あの戦争を大東亜戦争という言葉で使っていたが、当時の日
本人の当たり前の言葉であることもよくわかった。
 確かにフィクションではあるが、久しぶりに戦前、戦後の日本人の必死になって生
きて来た断面を見る思いがした。

 このような偏向した歴史観に捉われることのない番組をNHKはこれからも作ってほ
しい。このような力作が続けば受信料不払いのような動きはなくなっていくはずだ。