■心より紀宮殿下と黒田さんのご結婚をお慶び申し上げます
 
         〜結婚式に当たり、家族にとって大切と思われる記憶を次世代に伝えていくこと の大事さをメッセージされた皇后陛下〜

昨日、紀宮殿下と黒田慶樹さんのご結婚式が厳かに帝国ホテルで行なわれ
た。国民の一人として、このご慶事を心より謹んでお慶び申し上げたい。

 この日は、列島全体が奉祝ムードに包まれ、全国、紀宮殿下と縁のある地域
では趣向をこらした催し物があったが、大阪でも仁徳天皇陵や古市陵墓監区事
務所での記帳所の設置の他、道頓堀の「くいだおれ」前では、名物人形のくいだ
おれ太郎がご慶事の時にのみ着用する燕尾服のいでたちとと弟のくいだおれ次
郎が日の丸を持って万歳をしている模様が、テレビで放映されていた。またこの
日に挙式をしたカップルや街中の人々もご結婚を晴れやかに祝福していた。テレ
ビでは特番でご結婚式の模様と紀宮殿下の生い立ちを交互に何回も放映され、
奉祝ムードを一層高めていたように思う。

 昨今、暗いニュース、とりわけ、16歳の少年少女が幼なじみを突然に殺したり、
両親殺し、計画的に毒薬を母親に飲ませ、その様子をブログで不特定多数に知
らせるなど、通常では考えられない事件が続いていることもあり、半ば青少年の
反乱事件が食傷気味に報じられ、一体、家族の絆、友人との絆はどうなっている
と訝しく思っていただけに、この度の報道は紀宮殿下と黒田さんのご結婚式が国
民にとっても新鮮で、久しぶりのお祝い事に心から祝福したいという国民の願いが
反映しているものと思った。

 それにしても、ご結婚での紀宮殿下のご様子は気品に満ちており、会見でも
「黒田家の一人として新しい生活に臨んでまいりたいと思います」というお言葉に
は、
皇族から市民になられる凛としたご覚悟を感じた。またご披露宴の折の和服は
皇后陛下が着ておられた着物ということで、あでやかというよりも、皇后陛下のお
思いをそのまま引き継いで嫁ぎたいという紀宮殿下のご心情が籠られ、簡素なうち
にも清楚な雰囲気を感じることができた。

 人々は、このご結婚の様子に何を見、何を思ったのであろうか。確かに紀宮殿下
が皇室という身分から一般の身分になられ、新しい社会にどのように臨まれるのか
の関心と幸せな家庭をつくってほしいというささやかな願いもあるだろう。
 
 小生には、ご結婚式が日本の家庭の理想像を表わしているのではなかろうかと
考える。そういえばテレビの画面に映し出される天皇皇后両陛下、とりわけ皇后陛下
が紀宮殿下を大変、嬉しそうな笑みとともに、ずっと見守られている母親のご表情
であったのが印象的であった。

 皇后陛下がお誕生日(10月20日)をお迎えになられるに当たり、宮内記者会
の質問に対する文書のご回答の中で、次のように書かれておられる。

  経験の継承ということについては、戦争のことに限らず、だれもが自分の経
 験を身近に人に伝え、また、家族や社会にとって大切と思われる記憶についても、
 これ を次世代に譲り渡していく ことが大事だと考えています。

 皇后陛下は、戦争の記憶の継承だけでなく、誰にでも家族や社会にとって大切
と思われる記憶はあるはずであり、大切な記憶を語り継いでいくことが人生の糧と
なり、生きる力となっていくとの確信を言われているのではなかろうか。家族、社会
からひいてはそれが国の誇りにつながっていくもので、誰でも感得できるものである
ことを説かれているように思えるのだ。そして、同時に紀宮殿下への贈られるメッセ
ージであるようにも思える。

 続いて皇后陛下は、「紀宮殿下への思いをとっておきのエピソードを交えてお聞か
せ下さい」との質問に次のようにご回答されている。

  …制約をまぬがれぬ生活ではありましたが、自分でこれは可能かもしれない
 と判断した事には、慎重に、しかし、かなり果敢に挑戦し、控え目ながら、闊達に
 自分独自の生き方を築いてきたように思います。穏やかで、辛抱強く、何事にも
 自分の責任において行い、人をそしることの少ない性格でした。

  そして清子は、私が何か失敗したり、思いがけないことが起ってがっかりし
 ている時に、まず そばに来て「ドンマーイン」とのどかに言ってくれる子どもで
した。
 これは現在も変わらず、陛下は清子のことをお話になる時、「うちのドンマイン
 さんは…」などとおっしゃることもあります。あののどかな「ドンマーイン」をこ
れから
 どれ程懐かしく思うことでしょう。

 ここには皇后陛下が、母親として娘を温かく見守りつつ、紀宮殿下も娘として母親
を優しく守ってあげたいという、親子の絆、まごころの交流がそくそくと迫ってく
る。
ここに日本の家庭の理想像が現れているのではないかと思う所以である。

 紀宮殿下のご結婚に当たって、国民は改めてご皇族の公務の大変なこと、そして
それを内親王殿下として立派におつとめを果たされるとともに、両陛下の最も近くで
支えて来られたことを多くの国民が知る機会となったが、それ以上に固い家族の絆
が結ばれている素晴らしさを感じる機会となったのではないかと思う。