■絵に描いた餅の「女性役員4割」義務づけ−ノルウェー政権
 
 去る24日の産経紙夕刊によると、女性の地位向上論議が盛んなノルウェー
において、労働党中心の中道左派政権が「企業の役員の4割を女性にしな
ければ企業を閉鎖に追い込むことも辞さない」との方針を示し、来年1月に
も罰則規定を設ける意向という。ノルウェーといえば男女共同参画行政が進
んだ北欧の一角を占め、夫婦の離婚率も高く家庭が崩壊しているイメージが
あるが、2003年には中道右派政権下に「役員の4割を少数派の女性にする」
との法律を可決、同時に女性優位の企業であれば男性役員数も4割にしな
ければならないとのことである。

 しかし、この法律は今年7月までの移行期間までの進展状況を見た上で、
施行に踏み切る予定であったが、上場企業590社のうち、女性役員の割合で
この規定を満たしているのは2割程度とのことで、現時点で同法が施行され
れば、上場企業の大半が「違法状態」になってしまい、ほとんどの企業は反発
しているという。

 この事態は一時、我が国の地方での男女共同参画条例案に向けて、企業
でも役員のうち女性の数を多くするなど、男女共同参画行政に努力している企業
については、自治体運営主体の事業への入札など優先的に行なう規定などが
あったが、そのことがいかに絵に描いた餅であるのかを雄弁に語っている興味
深い事例である。現実的ではないのだ。

 なぜ、ノルウェーにおいても日本の企業においても女性が男性と同じ比率の
役員構成にならないのか。もちろん、女性主体の企業や起業があるが、それ
を除いては女性が役員を務められるだけの環境が整っていないこと、かりに
環境が整ったとしても女性のほとんどは男性を支え、家族と子供を直接に守
る役割があり、男性は家族の幸せを守る役割があることを自覚しているから
に他なるまい。

 ノルウェーではこの法律が施行された場合に、大半の上場企業が海外に
移転せざるを得ない、笑うに笑えない事態に陥ることも考えられ、国家の経済
力を衰退させてまでも一律的、一方的な男女平等社会を実現することの無意
味さを示している。

 それでも児童・家族問題省では、なおも「各種調査でも、性別で企業の役員の
バランスを図れば、利益が上がると判明した」といい、罰則規定以外に有効な
手段はないと強硬な姿勢を崩していないが、一体、かの国の政府は何を根拠
にして、男女共同参画行政を進めようとしているのか首をかしげたくなる。しかし
我が国はこの事例を他山の石にしなければならない。