■大和と運命をともにした乗組員の生き様と深き想い

 〜『男たちの大和 YAMATO』を見て〜

 昨27日(火)、レイトショーで映画『男たちの大和 YAMATO』を見た。年末、
この時間を逃したら見られないと思い、敢えてこの時間にしたのだが、結構
多くの若い人達で席が埋まっており、終戦60周年記念と銘打ち、また今年は
大和ブームであったことを証明したように思えた。

 映画はタイトルの通り、大東亜戦争開戦と同じ昭和16年12月に世界最大
最強を誇った大和が完成、乗組員の艦上での厳しい訓練、レイテ沖海戦での
初の実戦、そして昭和20年4月、ついに水上特攻の命令を受け、沖縄の海
へと出撃し、沈没していく一連の大和と大和と運命をともにする男達の思いを
描いたものである。

 案内チラシのイントロでは、

 その存在と概念は、現在なお日本人の心の原点として輝き続けている。
 そして戦後60年を迎えた今、戦いで海に消えた男たちの壮絶な行き様と深き
想いを乗せ、すべての日本人の魂を揺さぶる空前絶後の超大作『男たちの大和
/YAMATO』がついに出航する!

 とある。

 監督が佐藤純彌、キャストに反町隆史、中村獅童、渡哲也、仲代達矢、鈴木
京香という豪華メンバーに加え、特別少年兵役の松山ケンイチの熱演ぶりも
なかなか圧巻であった。
 なんといっても6億円をかけて大和の艦首から艦橋部まで約190メートルを
原寸の大きさで再現は、今の高層ビル18階にも匹敵するとのことで、当時の
大和の大きさを彷彿とさせた。
 壮大なスケールの舞台設定と登場人物の迫真に迫った演技、米国の戦闘機
から一斉射撃に対する機銃射撃と、息をつかせない戦闘シーンには圧倒された。

 ストーリーの詳細は皆さんに見て頂くしかないが、内田と名乗る女性に老猟師の
神尾が乞われ、大和が沈んだ場所まで船を出すこととなり、前方の海を見据える
神尾の胸に鮮やかに60年前の大和沈没の光景が甦っていった。神尾は大和
に乗艦していた特別少年兵で、沈没間際に艦の退去命令が出て、先輩の兵曹に
助けられての生き残りであり、内田という女性は、実は神尾の先輩の兵曹の娘で
大和沈没後、消息がわからなかったが、生きて孤児院などを経営し、亡くなった
ので、故人の希望でこの海に散骨してほしいとの希望をかなえる為に訪ねて
きたという設定となっている。
 主人公は、若き日の神尾という特別少年兵と先輩兵曹である。

 しかし当時の連合艦隊の事実上の壊滅といった絶望的な戦局や大和の水上
特攻という功罪という問題ではなく、死を目前にしての特別少年兵どうしの心の
通い合い、少年兵の先輩兵曹への尊敬の眼差し、兵曹どうしの心の触れ合い、
先輩兵曹の少年兵の思いやり、また永遠の別れとなるに当たって、最後にもう
一度上陸しての少年兵の幼馴染や母との別れ、妻や子供との別れ、恋人との
別れなど最後の瞬間まで、切ない別れを惜しみながらまた大和に戻っていく姿
には、思わず涙を落としてしまった。

 水上特攻に当たっては、乗組員は何のために死ぬのかで、議論もし、ある
上官は「自分達が死ぬことによって日本人が目を覚まし、新生するのだ」といい、
「死に方用意」をせよ、という場面もあるのだが、乗組員は必死になって自分達
の死ぬ意味に言葉を求めていたのであろう。

 この映画は前評判が高いこともあり、逆にいろいろな批判もあるとは聞くが、
小生には反戦・好戦イデオロギーと一切関係がなく、死ぬという極限状況の中で、
ただ愛する人を、家族を、友を、祖国を守りたいという一心で、こうしか生きること
ができなかった事実があったことを胸にズシンと刻むしかないのだと思った。

 場面の最後では、娘が大和が沈んでいる場所で父である内田兵曹の骨を
海に散骨し、「今、大和と仲間の人達に返しますよ」と口ずさんだが、亡き兵曹
は戦後、一貫して大和と戦友への思いを遂げることができたのではないかと
思う。

 そして神尾は今まで自分が生き残ってしまったことに後ろめたいものを感じ、
60年前のことを封印し、この場所に足を踏み入れなかったが、今、大和と戦友
に真向かうことにより、わだかまりが晴れ、頬に涙が伝った場面が出たが、この
瞬間に自分が戦友の思いを受けて、身代わりとなって生かされてきたことがわ
かったような気持がした。

 この映画のテーマは、大和と運命をともにした乗組員のただ一心に愛するもの
のために生きようとされた心が今もなお日本人の原点であることを訴えているの
ではないかと思う。全て、ひと括りでくくれない事実をありのままに、現代日本人が
捉えることが必要であることを教えてくれているのではないかと思った。

 是非、皆さんも機会を見てご覧下さい。