■各党の姿勢の違いは国のあり方についての言及で判断したい
  
 総選挙の公示がされ、いよいよ本格的な選挙戦に突入した。朝夕の駅前での
各陣営のマイクを通じての声、チラシ配布には熱を帯びたものがある。
 それにしても今回ほど選挙に対する国民の関心度が高いのも近年では珍しい。
なんといっても解散に至るまでの郵政民営化法案の成否を巡る自民党内での
駆け引き、そして公示前までに、郵政反対派に自民党を離党して新党なり無所
属として立候補する者に対して、徹底的に郵政民営化賛成派を落下傘や公募
によって公認候補として立てることにより、ある意味では小説やドラマ以上の劇
場型になったことが端緒になったことは衆目の一致するところだ。
マスコミにとっては今回の選挙ほど記事のネタを探すのに苦労せずに、毎日が
楽しくて仕方がないかもしれない。

 国民の関心の核心がどこにあるのかを読み間違えることは各党の勝敗に直結
する。前述したように、劇場型の動きを人々は小説やドラマより面白いと記したが、
実は今までの政治構造には直接、国民の声が反映されにくいと感じ、政治に対する
無力感と無関心と、どこの政党も自分の願いを満たすことができないことから確信
的な無党派層を作り出してきた経緯がある。その意味では、たとえ与党が「郵政が
争点」と言い、野党が「年金制度改革」「暮らしを守る」「9条を守る」ことが争点
と言
った場合でも、少なくとも国民一人一人がその問いかけられた問題を選択するとい
う、国民の優位性が初めて現実となった選挙である。そうであれば、別の意味で
小泉首相には功績があるとも言える。

しかし、ここに至っても依然、今回の選挙の争点とは何かという回答が見つけにくい
のだ。
ただ、安全保障・外交・憲法問題になると各党の姿勢の違いが歴然としている。いわ
ば、「国のあり方」、国をどこに導こうとしているのかのアピールである。2大政党
の一翼を担うべき民主党のマニフェストを見ると、従来の日米関係の機軸から東ア
ジア共同体の構築を目指し、中国、韓国との関係を強化し、米国への追従関係は
脱皮すべきとし、イラク派遣自衛隊を年内には撤退することを明記している。今まで
の外交の基軸である日米関係をどう捉えているのかが明確でなく、イラク臨時政府
から自衛隊の派遣要請が外務省にあったばかりだというのに、年内に自衛隊が撤
退するという姿勢をとることは、国際貢献を自らが進んで放棄することになるとい
う、
極めて現実不可能な内容となっている。それだけではなく民主党政権の下では、
國参拝は必ず中止することは岡田代表が折りに触れて表明している。

 今回の選挙が政党、政策中心というならば、我々有権者は、「郵政」「年金」だけ
でなく、各党の外交・安全保障・憲法に対する姿勢を冷静に読み取って、選択する
ことも有力な基準になるのではないか。