椎原 誠氏の論文   
1級建築士          

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保育園の室内に木材の使用を    2006.7.20   

 私は保育園の設計を行っています。将来を担う子供たちに心身ともにすくすくと健康に育って欲しい。この思いはだれにも負けないと自負しつつ図面と格闘しております。ところが残念なことに、保育園の2階、3階の内壁に木材が使用できないのです。
保育園を建てる場合、「児童福祉施設最低基準」が適用されます。その中の第32条(設備の基準)の「1項八のホ」に
「保育所の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でしていること。」
という項目があります。不燃材とはコンクリートに代表される無機質な材料であり、子どもたちの室内環境材料としていいか悪いかは言うまでも無いと思います。特に子どもたちが体が触れる壁の下部、床より高さ1.2mの部分(建築用語では腰と云う)も厚生労働省保育課では不燃材料とすることを指導しております。(建築基準法ではこの部分は不燃材料を使用しなくてもよいことになっております。)したがって木材、木製品など有機的な材料で子どもたちにやさしい材料は使いたくても使えないのです。
 ところが一方厚生労働省は、各都道府県福祉施設整備担当課長あてに、平成18年7月5日付けで児童家庭局総務課長補佐の事務連絡として「社会福祉施設における木材利用実態調査」がおこなわれその前文のなかに「近年木材の利用に関しては、地域経済の発展、地域経済の保全及び木材を利用した施設の居住環境が利用者に及ぼす心理的、情緒的効果を考慮すると、政府としての取組みが重要であるとの見地から、社会福祉施設においても木材利用の積極的な普及・啓発を図ってきたところであります・・・・」とあり、先の指導とまったく矛盾しているのです。
 子供たちの命を最優先。当然の話で何よりも何よりも大事なことは言うまでも無いことです。と同様に、課長補佐のお言葉「心理的、情緒的効果」すなわち子供たちに優しい環境もまた重要ではないでしょうか。防火対策としては、スプリングクーラーの設置基準とか、もっともっと考えられることがあると思います。
広大な土地に広い運動場、平屋の保育園を作るのが理想でしょう。しかし、都会では、土地の有効利用、2階、3階建てもやむを得ません。子どもたちのために保育室に木材が使用できますようお取りはかり願いたくお願い申しあげます。
      
〒5300047 大阪市北区西天満6-3-11-209
鰍b・E・M椎原総合設計

椎原 毅