柳葉政視先生の活動報告
( 文元厚生省附属機関課長 )

百人の会TOP 活動の記録TOP
仲間からの報告TOP
  
平成19年3月19日

柳 葉 政 視

元厚生省附属機関課長
自由民主党員
東京都中野区在住


「日教組」は真の“敵”なのか
・・敵は自らにある不適正な法運用だ・・


教育の荒廃が叫ばれて久しい。誰の責任でいつまで、この状態を放置して置くのかを憂えている多くの市民の一人である。
メディアはいじめ、校内暴力、登校拒否、学力低下、偏向教育・・・と日々報じている。関係者の多くがこれらの解決のために努力されている事実は承知しているが、一向に根本的な解決策が見出せない様子である。
第二赤旗(朝日)に象徴される「いかれたリベラル・イカレタ市民団体」はいざ知らず、良識ある国民の多くがこれら教育の荒廃の主な近因や遠因が「日教組」にあると見ている。しかし、私はそのようには見ていない。
私には教育に関しての専門的知識が皆無といっていいほど持ち合わせがない。だからといってこのまま憂いの深まるのを黙って見ているわけにはいかない、との思いで一言申し上げたい。
なお、以下、「行政当局と労働組合」に焦点を絞って私の考えを申し述べていきたい。


逆説的ないい方ではあるが、「いいかげんにしろ日教組(松浦光修氏著)」を拾い読みしたことがある。失礼なことではあるがこのタイトルには直ちに賛同できない。私ならば『いいかげんにしろ学校管理当局・教育委員会・文部科学省』、さらには『自由民主党』といいたい。
日教組の要求が法令規則に照らして正当若しくは妥当な言分かどうかを篩(法令適合性)にもかけず、さらには時間や場所を選ばずに相手の話しを無秩序に聞き入れていれば、相手はその行為が許された行為であり、後には「権利」であると誤認してしまう。こうさせてきたのが教育行政当局の歪んだ姿勢であると私は見ている。知人の元学校関係者もそういう意味のことをいっていたのを記憶している。

メディアやオピニオン誌等では日教組の横暴さ、理不尽さそして不当、違法な活動には“目にあまる”ものがあると報じられている。それにも関わらず関係当局はそういう事実の調査確認や毅然とした是正措置も執らずに放置してきた。日教組は悪くない、とはいわないが「いいかげんにしろ日教組」では済まされる問題ではないし、解決される問題でもない。これらのことを許してきた立場にある教育行政当局の責任は重大なものと思料する。
こういう中で、衿を正し職分を果たそうと努力された方々もおられたことと思う。が、結果としては、いわゆる“梯子を外された”状態になり、ご努力が水泡に帰してしまったことを無念に感じている人びともいたものと思う。私はそういう方々には深く同情の念を禁じえないものである。


日教組(日本教職員組合)は労組(労働組合)である。“労組の設立目的とは”が何なのかを今さら法令を見直すまでもなく、その目的は「労働者が団結し自らの地位の向上、労働条件の改善を図る」ことである。政治や行政に直接介入することが設立目的ではないし、また許されていない。日教組問題の解決方策はその言分を行政当局が「法」に照らし適正に取捨選択し執行さえすれば存外易しいものであると確信している。ようは“やる気”の存否が一番の重要な問題なのである。

労組の労働条件等の問題解決のための活動、交渉に関して、主に地方公務員法(第55条)を中心に説明すると、
@ 法の定めるところにより当局の管理事項、運営事項(一部労働条件等に関わるものを除く)、その他労働問題に関係ない事項に権利として介入したり、交渉の対象とすることはできない。
A 労働条件そのものを満たす問題であっても、下部機関(学校等)での当事者能力のない、いわゆる権限外事項についても交渉議題とすることは出来ない。裁量権のない当局が交渉に応じられないのは当然の常識である。さらに、
B 法は、要求問題は「予備交渉」で交渉の対象となる「議題整理」を重ね、時間、場所、交渉人員などなどを厳格に定めなければ本交渉に入れない。
C 正当な労組活動であっても学校内では勤務時間中または指定(許可)された場所以外では活動出来ない(集会・ビラ貼り他)。
これらの手続きは公務員の場合、法定(職務専念義務・庁舎管理規則等)事項であって、この手続きを経ない交渉または活動は不当・違法なものとなり、合意事項に効力が発生しないのは当然の理であり、むしろ職務権限の濫用や懲戒処分等の対象となりえる。これまで、これらの法で定める重要な手続きが日教組の「数と罵声の論理」で押し切られ、行政当局が恐れをなし、自らないがしろにして、安直に対応処理してきたようだ。これが教育行政における労組対応の真実であるものと思う。
子供じみた例示ではあるが「窃盗犯を責めるだけはなく、戸締りを堅固にし、防犯体制を整える」のがノーマルな社会市民の務めであろう。
特に国・地方の教育公務員の場合、身分上の特殊性からの特例もあるが民間労組と比べ政治活動等について“公僕”としての厳しい制限・制約があるのは周知の通りである。逸脱を許しておいては法治主義国家ではなく「放置主義国家」になり下がってしまう。「人権メタボ」関係でも、まだ食べ足りないという第二赤旗やイカレタ市民団体が喜んでいるのが目に浮かぶ。


今般、道教委(北海道教育委員会)と北教組(北海道教職員組合)の労使対立が報道されている。
@「いじめ(問題)実態調査」に関するもので、北教組本部が傘下の支部に対し調査の「非協力を指示」をしたこと。そして、それに係わる事態で道教委の行政目的が果たせなかった部分(一部の学校)が存在すること。
A 今年4月に行なう予定の「全国学力・学習調査」での、同じく「非
協力指示」である。
まさに、労組の狂気の沙汰であり“何でもあり”の様相である。当局はどのような弱腰で解決に当たるのか、じっくり経過を見つめていきたい。結果次第では道教委以下関係当局者自身の能力や服務規律違反が問われる問題でもある。
そもそも労組が主張し要求するこのような問題は当局の管理運営事項であって、労使の「対立」を構成する要件(労働条件改善等)の対象外の事項であって、労使間で取り上げられる問題ではない。発生した事案については、当局の直接担当権原者は懲戒(業務命令違反)若しくは分限処分(業務遂行能力の有無)の対象になる事案である。直接関与した労組系教職員等にもその疑いが存在するものである。こういう行為は、労使関係者それぞれの政治的思想・信条が右系か、左系かなどは問題ではない。法令やその運用事項に照らして「合致している」のか、「していない」のかが責任を伴う重要なことなのである。労組法、公務員法を「道路交通法」に置き換えていえば、道教委と北教組が“馴れ合い”でやっているこのようなことは児童、生徒や国民のための「安全運転」ではなく、教育を荒廃させる■飲酒暴走運転■なのである・・・。“許されるはずがない”というシロモノである、と同時に、子供たちの将来が「いじめ問題等」以上に途方もなく危惧される事案である。


 私は十数年前、現役公務員として厚生省附属機関の国立病院で日教組と同じような労組[全医労(全国立医療労働組合)=共産党系全労連傘下]の横暴で理不尽、かつ不当違法な活動に対峙し、厚生省(保健医療局)、地方部局、各国立病院(約200施設)が一体となりその不当不法な労組活動を封じ込めた貴重な経験を持つ管理者の一人である。
 多くは記さないが、労組の不当な要求のその一端を挙げれば、
@ 大阪市等の事例で全国に明らかになった「闇給与問題」、
A 同じく「闇休暇問題」、
B 労組役員の「勤務時間内活動」、
C 「労働条件適合性を無視」した強引で不適正な要求、
D 「議題整理や時間と場所等を無視」した強引な交渉要求、
E 「人事・予算案件」等への介入、
F 「健康保険法改悪反対」等の上級庁への上申強要、
などなど数え上げれば切がないものであった。
 これらの不当不法な要求事項で、なぜ多くの譲歩がなされたかといえば、それは、
@ 第一には、管理職員が労組対応に不慣れであったことや法令等の知識不足であったこと、
A 穏便に済ませたくて(または、左系信条を持って?)、労組のいいなりになる幹部がいたこと、
B 上級庁の指導不足や指導の不徹底、
などなどであった。
より適正な労組対応をするためには、上級庁の指導が重要なことは当然だが、管理者の労働問題に対する意識を深めることと知識の向上を、研修等を通じて図ることが必要であった。さらに関係部局間の情報交換はことさら重要なものであり役に立つものであった。
それにしても、これらの解決に当たり、旧郵政省やJR等の労組対応事例や司法の判例がテキストとして活用できたことは幸いであった。厚生労働省の先例を含め先達の経験を活用せず眠らせておくのはもったいない限りである。

教育行政の地方分権との係わりで、指揮、命令、監督、指導権限の運用上の限界もあり、文部科学省が抱えているジレンマは理解できるが、これまでやってきた教育委員会と日教組の“亡国的”とも思える所業に、責任ある教育行政関係部局が一体となり立ち向かう必要がある。
法律上無効なこれまでの「悪しき慣行や協定」等を廃し、“楔”を打ち込み現状を打破し、「法」に適う新しい「健全な労使関係」を構築するのが『教育再生』に向かっての急務である。
勿論、改革実行に当たり学校現場での混乱などが生じたり、予想される場合には怯んだり躊躇することなく、法に照らし「警察当局」との協力体制を構築しておくことは管理者の責務である。
これらの解決なくして■美しい国を目指しての教育再生■はあり得ないものと断言したい。
なお、私は、これら不穏当な労使関係の“解決の糸口”となるかも知れない考をもっている。法令の精読、幾つかの情報収集等が未了なためここでの記述を留保するが、考えが固まれば後日提言することとしたい。


文部科学省と政府与党である自由民主党・公明党はさらなる力を傾注して教育委員会・学校現場のバックアップに当たるべきものと思料する。

教育行政当局権原者は、今からでも遅くない。「子供たちの将来のため」、教育再生への国民の期待の大きさを真摯に受け止め、自らの責任の重さを深く自覚し、適正で公正な法の執行の立場から『新たな労組対応を決意』し、毅然として臨んでもらいたい。


改革のための敵は「本能寺」でも「日教組」でもない。
・・敵は自らにある不適正な法運用だ・・



Postscript

@文中最後の「本能寺」とは、日教組の応援団(イカレタ市民団体、第二赤旗旗、左翼シンパ思想集団等)の意味で記した。
A本文の考え方は、「自治労」他、国・地方公務員労組に対して、共
通する「考え方」である。
B日教組(私学労組を除く)の労組活動に関連して「云々(擁護または批判)」する人は、「地方公務員法第55条(国家公務員法に準ずる)」を見ずして語るな、といいたい。護憲または改憲を「憲法9条」を見ずして語るのとほとんど等しい。   49号(教育関係の記事のみ抜粋)