柳岡克子活動報告
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H20-9-18 修学旅行のあり方を考える  −失われた絆を取り戻すために−


 
母校の高校の修学旅行がスキーツアーとなって20年近くになる。雪の少ない和歌山の生徒にとってはスキーはいい体験となり否定はしない。しかし、「いい想い出を作っておいで」と送りだしたわが塾の生徒に聞くところによると、指導はインストラクター任せで一緒にすべることができる教師も少ない。部屋はカプセルホテルの個室で移動中のバスの中では一緒に歌を歌うこともなく各自がゲームや居眠りに興じ、ガイドさんの声も上の空という集団移動である。他県の歴史を学ぶことも自然を満喫することもなく信州そばと野沢菜を土産に夜行バスは走る。そうだ。
 昨今の教育は個人主義に走りすぎたあまり、他人を思いやる心や仲間意識に欠け、家族、職場、地域においても絆が失われている。「一つ屋根の下に寝る」とかいう一体感が感じられない。共通の目的を持ち、共に考え解決していこうと智恵を出し合い達成したときの喜びを分かち合うことが学校からなくなってしまった。学校は、旅行会社が示すプランに安易に乗るのか、日教組の先生方があえて選ぶのかはわからないが、近隣の反日歴史博物館など見学させられ、自虐的史観を植え付けられ、日本人としての誇りや魂を傷つける歴史を教え込まれるのだ。これこそ日本がきちんと歴史教育をしてこなかった付けでもある。教師は教育者としての自覚もなく危険の少ない楽なカリキュラム、そして生徒の喜びそうなテーマパークなどを選んでしまう。修学旅行こそ普段できない体験を皆で味わい乗り越えていくことによって新しい発見があるすばらしいチャンスなのに。修学旅行の本来の目的は、集団生活をすることによって社会性を養い、教科書では学べない見聞を広めることである。知識だけを詰め込む塾にはない大きな教育的効果があってしかるべきである。
 私は生まれつきの障害児であったが健常児と一緒の小中高校に通い母同伴で修学旅行に参加した。特に高校では、クラスの皆が私をサポートするためのホームルームを開いてくれ車いすを押す係り、荷物を持つ係り、階段を手助けする係りなど、グループに分かれて役割を決めたくれた。クラスの一員であるから全員で私を仲間だと思い、平等にサポートしてくれたのだ。これは私が頼んだのではない。誰からともなく話し合われ皆が賛同した。そんな素晴らしいクラスに恵まれいい仲間に出会えたおかげで今の私がいるといっても過言ではない。このことがあってクラスの絆はいっそう深まったように思う。26年も前の私的な体験から現在の修学旅行を憂いでいる。
 そこで私は提案する。素晴らしい自然に恵まれた漁師町や山奥の過疎地の民泊だ。地引網体験や林業体験を地元の人と一緒にし、そこの家庭に泊まる。郷土料理の講習会をしてもいいし、個人の家庭料理を一緒に楽しんでもいい。テレビや携帯電話やゲームと離れ、自然の中で生活し、そこの歴史や伝統文化に直接ふれる。これこそが教科書では学べない修学旅行ではないかと思う。実際今年度和歌山県で実施した民泊の評判がよく来年度の予定校が増えている。自然体験を通して人とのふれあいを学び、生徒は新しい発見をする。また、生徒を受け入れる側でも態勢の整備に伴って、過疎の町に活気を呼び込み地域を見直し、失われつつある伝統文化の掘り起こしに繋がるという一石二鳥の効果をもたらす。
 その他にもいろいろ提案したい。日本を支えるものづくりの大切さを教える中小企業の職業体験などもニートと呼ばれる目的意識のない若者を増やさないためにもいいのではないか。また、日本の安全がどのように守られているかを認識させるため、自衛隊を見学する。戦争に反対するなら他国ではなくまず靖国神社へお参りし、きちんとした日本の歴史を教えるべきである。寺や神社に合宿し、掃除や座禅など精神を統一して外界から離れ自分自身を見つめなおすことも必要。宗教教育ができない日本の教育そのものを見直し、情操豊かな子供を育て、一斉に手を合わせ「いただきます」と一粒の米にも感謝する心を育てることが大切である。人間国宝の技術を学んだり伝統芸術の鑑賞などもいいのではないか。何も遠くへ行かなくても自然の家で集団生活と規律を学び、河原でテントを張って飯盒で炊爨し、キャンプするなども都会の子供にはいい経験となる。クラス皆で何かにチャレンジし、根気を育て共に達成感を味わい絆を深めるのも心の教育には必要なことだ。
以上具体的な提案をしてきたが、さまざまなカリキュラムを生徒の発達段階に合わせて、親や教師が子供を育てるという視点に立って計画することが大切なのである。修学旅行のあり方を議論することは、教育の根本を問い正すことであり、失われた絆を取り戻し、「戦後レジームからの脱却」を進め、美しい国を作ることにつながるのだ。