平成17年1月19日
自由民主党幹事長 武 部 勤 殿
横浜の教育を考える会 代表 湯澤甲雄
横浜市南区大岡3−41−10
TF045−713−7222、74歳

      義務教育の基本に関する考察について(意見その2)
    <国際条約「人民の自決権」と「アイデンティティ」の確立>


1月13日「教育委員会の廃止と義務教育庁の新設」に続いて、掲題に関し意見を申し述べさせていただきます。
私は、前文で基本的人権の尊重に基礎を置いたその上に、自由民主主義政治を普遍とする政治体制を築き、第一条に国民統合の象徴であり、国民の総意に基づき天皇を置くとした憲法は、日本国民の重要なアイデンティティ2点が冒頭に書かれていると考えています。アイデンティティとは、人権の根幹に位置する最も重要な人権とこの場合理解します。
アイデンティティを含む基本的人権の定めは、憲法に次いで効力を持つ国際諸条約に定める基本的人権の規定に詳細に記されていて、わが国はこれを尊重することを国際社会に約束していaます。
しからば国際条約では人権をどのように保護しているかといいますと、先ず憲法または法律によって与えられた人権(以下「人権策定法規」(仮称)という)について、これを保護する法(以下「人権保護法規」(仮称)という)が作られる構図になっていることが判ります。
例えば、「世界人権宣言第8条(救済を受ける権利)すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済をうける権利を有する」。
また「子どもの権利に関する条約第8条(アイデンティティの保全)締約国は、子どもが、不法な干渉なしに、法によって認められた国籍、名前、及び家族関係を含むそのアイデンティティを保全する権利を尊重することを約束する」とあります。
ところで、自民党の平成17年度の運動方針案の中に「靖国神社参拝 戦争の犠牲となり、また国の礎となられた御霊に心からの感謝と哀悼の誠を捧げるため参拝は受け継いでいく」「教育基本法改正 法改正で伝統文化を尊重し、郷土や国を愛する心や公共の精神が身に付く教育――云々」(以下「2案」という)とあるのを新聞で見ました。察するにこれらの2案は、国会決議を経て成文法に制定することによって実現を目指しているものと思います。従いましてこの2案につきましては、「人権策定法規」の制定が見込まれますので、第一関門を突破しますが、同時に「人権保護法規」の制定により有効に機能させる必要があります。
わが国においては、日本人としてあるいは日本国民としての「人権策定法規」の制定中就く、日本人のアイデンティティに関する法の定めが、全くといっても過言ではない位疎かにされてきているものと思います。
これについて国際条約上の規定は、次のようになっているものと思います。
「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第1条(人民の自決権)」並びに「市民的及び政治的権利に関する国際規約第1条(人民の自決権)」は、両者同文にて次のように書かれています。
「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追及する」とあります。
靖国神社参拝は、日本人の人生観、死生観の問題と言われていますが、靖国神社参拝だけにこだわらず、もっと広い視点に立って、天皇を中心として全国津々浦々に土着している多神教の伝統的習俗・習慣を尊重し、常に平和を希求する日本人の宗教観について、これを日本人の自決権としてとらえて、「人権策定法規」の中に規定すべきではないかと思料します。それはかつての森首相の「神の国」発言と軌を一にするものでありまして、「日本は、神によって作られ、その神の子孫が天皇として国を治め、現在も伊勢の神宮をはじめとして八百万の神が地上に鎮まっているがゆえに、われわれは神を祀ることによって神明の加護を得て、この世において救われる」とする人生観、死生観について、日本人の自決の権利とする政治的地位を決定するとともにアイデンティティとして確立し、社会的、文化的、市民的発展を自由に追及する「人権策定法規」の制定を希求いたします。
これが義務教育の基本であり、国民の信頼をかち得て自民党の国民政党化へ向けた着実な前進となるに違いありません。なお「人権策定法規」について、教育基本法の中に規定するのか、あるいは国旗・国歌法の如く独立法が良いのか、私には判断いたしかねますが、前記の通り国際条約人権法規には準拠して定められなければならないのであります。
また最近、韓国憲法裁研究部長金昇大氏が「憲法慣習の法規範性に関する考察」という論文の中で、慣習憲法の概念を発表したと報じています。それによれば、「憲法事項をすべて憲法典に載せるのは不可能で、時代の変化によって成分憲法に欠陥が生じるため、それを補足する慣習憲法が成立しうる。慣習憲法は、成文憲法が制定される前に形成されたが、成文化されていない<先行的慣習憲法>と、憲法制定以降に形成された<後行的な慣習憲法>に分けられる。<先行的慣習憲法>は、憲法制定以前から続いている韓民族の本質的な特徴であり、古い慣習として国民共通の合意が確かに存在する懸案であり、<後行的慣習憲法>とは、制定憲法の施行以降継続された慣行としている。」
このように見てまいりますと、「人民の自決権」「アイデンティティ」の問題は、冒すことも冒されることも許されない歴史的慣習・習俗憲法として制定されることも、検討の対象とすべきではないかと思料する次第です。

蛇足ながら、外国人参政権の問題についても、国際法上の観点からも見なければならないと思います。
確立された国際法規と理解されている「世界人権宣言第21条(政治的権利)1項・すべて人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。2項・すべて人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。」とありまして、在日韓国人の参政権や公職への就職を求める公明党の主張は、国際人権条約の規定に照らして、外国人が保護されるべき権利ではないのであります。即ち公明党の主張は、日本人に対する人権侵害・アイデンティティの侵害・自決権の蹂躙となるのであります。以上