平成19/10/10 反対討論

意見書に反対するにあたり、少々時間は長くなりますが、事実を摘示し、私の考えを述べさせていただきます。 
そもそも、皆さんは沖縄の集団自決で軍の関与が問題とされるものが何件あるかご存知ですか。実際に問題とされているのは、座間味島と渡嘉敷島の2件だけなのです。まず、その事実を頭に入れていただきたいと思います。
また、意見書には、「今回の削除、修正は体験者による数多くの証言を否定しようとするものである」との文章がありますが、その証言とはいったい誰の証言を前提にされているのでしょうか?
先日行われた検定撤回を求める沖縄県民大会の参加者数について、主催者発表は11万人であるのに対し、琉球新報が掲載した集会場の航空写真に写った人数は、13037人でありどう多く見積もっても2万人には及ばないとする調査結果も報告されておりますし、こうした事実をみると、撤回を求める方々のいう「多くの証言」という表現に私は疑問を感じずにはおれません。 
また実際に、「沖縄県史」等に収録された住民の証言禄には、集団自決が「軍の命令」で行われたことは一言も書かれておらず、集団自決が「軍命令」によるとしたのは、戦後昭和25年に沖縄タイムス社から出版された『鉄の暴風』という書籍が最初です。この本では渡嘉敷島の集団自決について書かれており、特攻にいく途中で攻撃を受け、偶然、島の守備隊長となった赤松嘉次(あかまつよしつぐ)元大尉が自決命令を出したと記載されております。しかし、この記載内容に関しては、平成四年に出版された曽野綾子(そのあやこ)氏の「ある神話の背景」という書籍の中で細かい事実の検証がなされたため、その虚偽的記載内容が明らかとなり、当時の段階で沖縄県史等から集団自決命令の記載が削除され、修正されています。
また、座間味島の集団自決については、旧日本軍の梅沢裕(うめざわひろし)守備隊長が自決命令を出したと証言する、宮城初枝(みやぎはつえ)という生き証人がいたことから、自決命令はあったとされてきました。しかし、その宮城初枝が、島の復興のために偽証を強いられたことを証言し、「嘘を言って梅澤さんを苦しめてきた」と謝罪をしたことで、歴史的な事実が明らかになり、座間味における集団自決の見直しが行われたのです。
こうした、事実の積み重ねから、文部科学省が公正に検定意見を出した結果、今回の教科書の修正がなされたのです。しかも、修正といっても検定前に「日本軍に『集団自決』を強いられたり」とされて表記が「追いつめられて『集団自決』した人や」と変更されたり、「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた」といった表記が、「なかには集団自決に追い込まれた人もいた」と変更され、軍の命令や強制といった表現を控えたのみであって、「軍の関与は全くなかった」といった記述になっているわけではありません。
今回の意見書では、本件に関連する訴訟の判決が確定しておらず、不確定な要素が多いといった内容の文章がありますが、不確定であるから、教科書の表記も不確定な表現に変更されただけであり、旧日本軍を正当化したり美化するような表現には一切なっていないことをご理解ください。
また、意見書には、「双方の意見ではなく、原告だけの主張を取り入れ、検定意見に反映させたのは一方的である」といった文章もありますが、意見書に賛成された皆さんは双方の意見や証拠の精査をされたのでしょうか。端的な証拠を挙げますと、自決命令はなかったとする原告側からは、座間味島の唯一の証人とされていた宮城初枝が、村の復興のために、偽証を強いられた経緯が綴られた手記や、彼女が梅澤隊長宛てに送り届けた手書きノートが証拠として提出されており、後者には、梅澤隊長が自決のための爆薬の提供を求めた助役の申出を断ったことが明確に書いてあります。一方、被告側からは物証ではなく、当時の座間味村の助役の妹が証人として出てきており、助役が「軍から命令がでています」と村民に告げているのを聞いたという立証能力の薄い証言がされたのみなのです。
皆さんも公平な目でこのような証拠を精査されれば、検定員の判断が一方的かどうかお分かりになると思います。

私も、以上のような情報や知識がなければ、「悲惨な戦争の最中そんなこともあったのかもしれない」といった情緒的かつ無責任な判断で、意見書に賛成していたかもしれません。しかし、そうした我々の曖昧な認識や態度が戦後歴史の事実を歪めてきたように思えて仕方がないのです。私も戦争は嫌悪しておりますし、人権の意味も法科大学院でしっかり学びました。何も個人的心情から事実を捻じ曲げ軍隊を美化したいと思う者ではありません。ただ、一人の日本人として、青少年の健全な成長を願う一市議会議員として、後世に恥じなければならないような歴史の事実認定を見過ごしてはならないと感じるのであります。
そしてそもそも、歴史の事実認定や教科書記述の見直しは、法律家や歴史家の行う範疇の仕事であり、政治の介入は避けるべきであるとも考えておりますので、本市市議会がこのような内容の意見書を出すことには賛同できません。

以上の意見を付し、当意見書に反対いたします。
また、政策判断ではなく、歴史事実の認定といった問題には、事実を知っていただいた上で、会派の枠を超えた議員個人の良識ある判断をお願いしたいと切に願います。

以上です。