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三澤 廣氏の活動報告
(作家)

 三澤 廣氏の一覧


世の中のウラのウラ (H30-7-24)


    
 岩波新書から「現代たばこ戦争」という本が出ています。著者は伊佐山芳郎という弁護士の方。ちょっと古いのですが、一九九九年に出版されました。「嫌煙権確立を目指す法律家の会」を結成した人です。
 私も禁煙するのに散々苦労した過去がありますので、我が意を得たりという思いのする名著でした。感心したのは、煙草産業がどのような策略を弄して、煙草を売り込むことに腐心しているか、その内幕を見事に解明していることです。
 かつて、車内広告に「スポーツにも人生にもルールがある。ルールがあるからガンバれる。『たばこはハタチになるまで吸ってはいけない』これがルール」というのがありました。「日本たばこ協会」と「大蔵省(財務省)」の作なのですが、著者によると、この広告は、「喫煙行動についての心理分析などを積み重ね」た結果、「子供たちに喫煙を煽」る為に作りだした企業秘密だったということです。
 子供たちは「社会に刃向かう自分の姿に優越感を感じる」ものですから、「ルールに従えと言われれば、破りたくなる」のです。
 二十年近くも昔の広告ですが、私もこれを見て、奇異の思いに捉われた記憶があります。「こんな広告を見たら、逆に子供は『煙草を吸うのはかっこいいことだ』と思ってしまうだろう」と危惧したものです。
 豈図らんや、その心理を衝いて、未成年者に煙草を吸わせて、煙草産業の繁栄を図ろうという魂胆だったとは! 過失ではなく、故意の確信犯だったのです。若者の心理を見抜けないのではなく、見抜きに見抜いて、その裏を掻いたのです。
 真の目的を隠し、綺麗事を口にして、話を自分の有利な方に持って行こうとするのは、ソクラテスが嫌悪したソフィストの手口とも言われます。
 著者はその巧みな戦略を見事に暴いています。
 これに関連して思い出したことがあります。
 ちょうど、この煙草の広告騒動の頃ですが、中学校・高校で、校内暴力が吹き荒れました。
 その一つの原因として、教育関係者の間で、密かにささやかれていたのは、テレビドラマ「金八先生」です。「金八先生」といえば、生徒のために我が身を犠牲にして尽くす理想の先生でした。それがどうして、校内暴力の増加に寄与したのでしょう。
 このドラマでは、校内暴力を揮う生徒に対して、良心的な先生たちが親身になって相談に乗ってやります。そして、最後には生徒は先生たちの誠実さに打たれて、真人間になって「立ち直る」というお涙頂戴の物語になっています。
 このドラマの問題点は、子供たちに「暴力は悪いことではあるが、かっこいいことだ」というイメージを繰り返し繰り返し刷り込んだことです。
 「真面目な生徒」「大人しい生徒」「いじめられっ子」には、先生は真剣な対応をしてはくれません。暴力を揮えば、先生たちは「なんとかしなければいけない」(自分に危害が及ぶから)と考え、生徒の機嫌を取ることによって収拾を図ります。暴力生徒にとっては、自分がスターとしてデビューできるチャンスなのです。
 生徒は、かっこよくありさえすれば、悪くたってかまわないと思っています。いや、悪いからこそかっこいいと知っていて、暴力に走るのです。女子生徒からは憧れの目で見られ、男子生徒からは恐れられ、先生たちからはおだてられる。もともと暴力的な生徒たちは、「金八先生」を見て、自分たちのやり口が合目的的だったことを理解したのです。
 それを煽り立てたテレビ局は何が目的だったのでしょうか。一部の保守派は、「反日の連中が日本の教育を破壊するために、ことさらに学校を混乱させているのだ」と言います。なるほど「裏の裏」を見ているとは思いますが、流石に穿ち過ぎで、「裏の裏の裏」まで見てしまった観がないでもありません。
 やっぱり煙草産業の場合と同じように、自分の利益が目的だったのでしょう。テレビ局に有利になれば、教育が崩壊してもかまわないというつもりだったのです。「日本たばこ協会」や「大蔵省(財務省)」と同じように、教育に逆効果になることを予測しつつ、「生徒たちは喜んで飛びついて来るだろう」と踏んだのです。それが見事に功を奏したのですから、驚かないではいられません。つまり目的は視聴率稼ぎです。
 世の中には、こういう「裏の裏」がいくらでもあるのです。
 最近では、皇室に対する識者・新聞・テレビの態度がそれです。
 女系天皇を支持する人たちは、「皇室の存続を図るためには、女系天皇を認めなければならなくなる」と言います。平成十七年の「皇室典範改正に関する有識者会議」は、満場一致で女系天皇を認め、しかも、完全な男女平等で、実質的に「愛子様に弟宮がお生まれになっても、愛子様を優先する」という規定を作ろうとしたのです。
 「皇室の存続を図る」ためなら、そこまでする必要はありません。中川八洋氏によれば、この有識者会議のメンバーは、反皇室の人が多かったとのことです。「皇室の存続を図る」という甘い言葉の裏で、女系天皇によって伝統を破壊して皇室の尊厳を奪い、「もう万世一系じゃないのだから、天皇制なんかなくてもいいじゃないか」というつもりなのです。
 さる反皇室の大学教授は、「女系天皇になったら天皇制に反対しやすくなる」と言っています。煙草産業の手口となんと似ていることでしょう。
 こういう詭弁に騙されてはいけません。マスコミや学者や企業の広告が、本当は何を言いたくてこういうことを言っているのか、我々はもっと、勉強しなければならないのです。煙草産業が子供の心理を見抜いたように、人間の心理を読む訓練をする必要があるのではないでしょうか。
 最近、蓮舫氏と山尾志桜里氏が女系天皇に関して、右の例と同じ面白い発言をなさいました。蓮舫氏は「私たちは今、皇位継承者がいなくなるかも知れないという重大な問題に直面しているのです」。山尾氏は「私は天皇制を維持したいと思っています」
 そして、二人とも、その結論として、「だから、女系天皇を認めよう」と言うのです。
 蓮舫氏も山尾氏も、皇室制度に対して好意的な人であるとはとうてい思われません。そういう人たちがおためごかしに「皇室のことを思うから」という理由を付けて、国体破壊の第一歩である女系天皇を推奨するのです。青少年に煙草を吸わせようとする悪魔の策略と余りにも似ているので、慄然とする思いです。
 それにしても、この「現代たばこ戦争」という本。論理的な思考方式を教えてくれる、社会がどういう構造になっているかを教えてくれる、という意味で、論理学、哲学の域に達した素晴らしい著書です。ご一読されるようにお勧めします。